第14-2話 「ダブルデートでもしようじゃない‼︎」
「「……あ、あの‼︎」」
廊下に立たされてから数日が経過したある日、私は新谷んに例の疑惑についてそれとなく質問しようとしていた。
しかし、全く同じタイミングで新谷んが話し始めて私と話し始めるタイミングが被ってしまった。
「「そっちからどうぞ」」
気まずくなってしまったので、先に新谷んに要件を話してもらおうと思ったのだが、その言葉さえ新谷んと同じタイミングになってしまい、私と新谷んの間には微妙な空気が流れている。
「すまん。それじゃあ俺から訊かせてもらうわ」
「ど、どうぞ」
「椎川の彼氏ってどこに住んでんの?」
「……へ? なんでそんなこと新谷んに言わないといけないの」
私が意を決して新谷んに本当に彼女さんと付き合っているのかどうかを確認しようとしたところで、新谷んはわけの分からない質問を投げかけてきた。
私の彼氏がどこに住んでいるかなんて訊かれてもそれは個人情報なので答えられるわけがない。
それに、彼氏なんていないのでそもそも住所なんて答えられるはずがない。
新谷んは私の彼氏の住所を知って何をしたいのだろうか。
まさか私を奪い合うためのバトルを⁉︎ ……ってまあそんなわけがないことくらい分かってるけど。
「いや、まあそりゃそうなんだけどさ」
「個人情報なんで言えません」
とにかく、色々な意味で彼氏の住所なんて言えるはずがないので、私は新谷んからの質問に答えることはしなかった。
しかし、新谷んからさらに驚きの質問が投げかけられる。
「椎川ってさ、本当に彼氏いるのか?」
その質問は今まさに私が新谷んに訊こうとしていた質問だ。それをなぜ新谷んが私に訊いてきたのだろうか。
まさか新谷んも私同様何か情報を掴んだのか⁉︎
いや、だが私は何も情報を漏らしていないはずなので、新谷んに疑われるはずはない。
それならば、動揺せずに毅然とした態度で返答するべきだろう。
「え、な、そんな嘘なわけないじゃん。急に疑ったりしてどうしたの?」
若干声が震えてしまったが、とりあえず問題なく回答することができた。
「いや、特に理由はないんだけどな。なんとなくだよ」
「なんとなくでそんな質問する?」
「したんだから仕方がないだろう」
やはり新谷んは何か掴んでいるのか?
なぜそんな質問をしてきたのかは分からないが、とにかくこの危機的状況を回避しなければならない。
「じゃあ新谷んこそ、本当に彼女さんと付き合ってるの?」
私がとった行動は、新谷んからされた質問をそっくりそのまま質問し返すことだった。
そうすれば私の回答権は新谷んへと移ることになる。
「付き合ってるよ。付き合ってもないのに付き合ってるなんて言うわけないだろ?」
まあ仮に嘘だとしてもそういうよね。
実際私だって嘘をついてるわけだし。
「それなら私だって同じだよ。付き合ってないのに付き合ってるなんていうわけないじゃん」
「どうだかな。周りの友達はすぐ彼氏ができるのに、彼氏ができないのが嫌で嘘ついたんじゃないのか?」
ここまでは動揺しながらもなんとか冷静に返答できていた私だったが、新谷んのその言葉にカチンときた。
私は決して彼氏がほしいわけではなく、自分がこれまでに経験してきた酷い過去を基に仕方がなく彼氏がいると嘘をついているだけだし、なんなら彼氏なんて作ろうと思えばいつだって作れるくらいモテるんだから‼︎
「そ、そんなわけないでしょ⁉︎ それなら今度ダブルデートでもしようじゃない‼︎」
「ああいいよしてやろうじゃねぇか‼︎」
……あれ? 今私、頭に血が上って冷静な判断ができてなかったけど、とんでもないことを口走らなかったか?
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