第4-1話 「尾行しますか」
土曜日、私は親友である
食べ歩きをしながらお店を見て周り、学校での愚痴を話すのが杏樹との遊びでは定番となっている。
「いやー、いつか彼氏とこんな風にデートしてみたいもんだね」
「もう私が彼氏になってあげようか?」
「彼氏っていうか彼女じゃないそれ?」
「確かにっ」
杏樹は長身黒髪ロングのモデル体型で、明るく人懐っこい性格をしており男子からの人気は非常に高い。
彼氏なんて直ぐにでもできてしまいそうなのだが、逆に高嶺の花過ぎて男子があまり寄り付かないらしい。
冗談で言っただけだが、本当に私が彼氏になってあげても良いと思うほどに格好よくて可愛い女の子だ。
「でも望結彼氏いるしなー」
「もうっ。嘘って知ってるんだからそんな風に言うのやめてよ」
「ははは。ごめんごめん」
杏樹はこの学校で私の彼氏の存在が嘘だと知っている唯一の友人だ。
彼氏の存在を嘘を知っているのは、杏樹と私が同じ中学校に通っており私の過去を知っているからである。
杏樹は中学時代から私の面倒くさい相談に文句一つ言わずに乗ってくれる良き友人で、今も私が嘘をついている理由を知った上で協力してくれる良き友人だ。
「杏樹は彼氏とか作らないの?」
「……まあ作らなくはないよ」
「……? そっか。まあ杏樹なら彼氏なんてすぐできるだろうしね」
私の質問に対して返答する前に若干間があったのが若干気になるが、ただ単に彼氏を作るかどうか悩んでいるだけなのだろう。
「そんなことはないけど……ってあれ、ちょっと遠目で分からないけどあれって新谷くんじゃない?」
「え? 新谷ん?」
杏樹が指さす方向に視線をやると、そこには確かに新谷んが立っていた。
新谷んは今日デートだと言っていたので、私服もオシャレに着こなしているのかと思いきや、意外とラフな格好をしている。
それに、新谷んは水族館に行くと言っていたが、近場で水族館のある場所を考えるとここから1時間以上はかかる場所にあるので、新谷んはここにいるべきではない。
今日本当にデートをするのかどうか怪しい匂いがする。
「なんでだろう。新谷ん今日は彼女と水族館に行くって言ってたんだけど」
「水族館ってなるとここで待ち合わせしてるのはおかしいよね」
「そうだよね……。目的地が変わったのかな?」
目的地が変わったと考えれば新谷んが今私たちがいる場所にいても違和感は無いが、昨日の今日で急に目的地を変更したりするのだろうか。
「もしかしたら新谷も望結みたいに彼女がいるって嘘ついてるだけだったりしてね」
「ははっ。杏樹面白いこと言うね。流石にそんなわけないでしょ」
そんなわけない、とは言いながらも、その可能性については昨日新谷んの話し方に違和感があったせいでゼロだとは言い切れない。
まさかとは思うけど、本当に彼女の存在が嘘だったりするのか?
私たちはしばらく無言のまま新谷んの姿を見つめてから、目を見合わせた。
「「尾行しますか」」
尾行なんてすべき行為ではないと理解してはいるが、尾行したい衝動を抑え切ることができなかった。
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