09話.[ありがたいこと]
「今日は私が真由を独占しちゃうよ」
お正月からこんなことを繰り返している気がする。
それでいい感じになったタイミングで必ず和が来て彼女が負けるんだ。
私はそれを見ていることだけしかできない。
でも、必ず煽るようなことをする彼女も悪いから気にしなくていいのかも。
「って、私達はずっとこんなことをしているね」
「うん」
「つまり、それ以外では特になにもなかったということだよね……」
確かにその通りだった。
バレンタインデーはともかくとして、それ以外では本当にただ学校に通っているだけだった。
他者からすれば同じことばかりしている怪しい三人組のように見えたと思う。
「なんか悲しくなるから他のことを考えようか」
「そうだね、あ、もうすぐ二年生になるね」
「うん、早いものだね」
二年生になったらしたいことは、したいことは……なんだろう?
とりあえず風邪を引かずに毎日元気よく通う、というところでいいだろうか。
終業式までしっかり通えれば一日も休まなかったということになるわけだし、引き続きそれでいい気がした。
あとこれは目標ではないけど、やっぱりふたりと同じクラスになれればいいかな。
「んー、同じクラスになれるといいけどなー」
「なれるよ」
仮に一緒のクラスになれなくても休み時間に会えばいい。
学校では無理でも放課後になったらとかいくらでもやりようがある。
私達はやっぱり三人でいるのが一番だと考えているので、少なくとも高校在学中そこは変わらないというわけだ。
「私だけひとり別のクラスとかになりそう……」
「ならないよ」
私がそうなる可能性は高いような気がするけど……。
いやでも、どうしたって当日にならないとどうなるのかは分からないから考えても仕方がない。
たったそれだけで一年間がどうなるのか決まるようなものだから怖い。
結局、そうなったらそうなったで上手くやるだろうけど、ちょっとわがままでいたかった。
「仮にそうなっても、また、私が逆の立場でも必ず行くから大丈夫だよ」
「本当……? 裏切ったら刺すよ?」
「うん、ちゃんと守るよ」
そもそも放置するようならここでこうしてゆっくりふたりきりでは過ごしていないんだ。
すぐ近くに和がいる状態でも彼女を優先することだって多いんだから。
ちなみにこれは許可を貰っているから問題にもならない。
つまり無問題だから気にしないでこれからも行くだけだ。
「そろそろ戻ろっか」
「あ、ちょっと待って」
彼女は授業前になると必ずこうしてくるようになっていた。
私としては暖かくていいからありがたいことでしかなかった。
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