第47話 これは必要な手続きなんだよ‼︎

「みなさん、ご入学おめでとうございます。……さて、自分はこのクラスの担任をつとめる『ロゼン』という者だ」


俺はC組で、担任の自己紹介を受けていた。

あ、一年生は5クラス二十人ずつらしい。


えーと、その教師が、なんと獣人であった。

初めて見る。もふもふ。

この感じだと…。


「自分は狼の獣人だ。なにか問題を起こしたら噛み付くから、覚悟しとけ」


やっぱり!てか噛まないでください。

児童虐待では…?


「…じゃあ、生徒諸君も自己紹介をしていけ」


ロゼン先生が、黒板に話す事を書いていく。

あ、達筆だ。すげえ。


「では…前から順に喋っていけ」


*****


「我輩はアビィ・シヴァ。好きな物は果物。特技は…人脈をつくること。よろしく頼む」


あ、いつの間にか前の人が終わった。

次は俺の番だ。


席を立ち、自己を紹介する。


「えーと。ルーク・スケヴニングです。好きな物は…猫ですね。特技はまだ見つけられていません。これからよろしくね」


ひゅう。緊張したー。

……ん?


「…おい、今の聞いたか?スケヴニングだって!」

「あー、公爵家の!…マジかよ…」

「えー!めっちゃイケメンじゃん!」

「…どーせ僕ら平民出身は蔑まれるよ」


ざわざわ。


……ん?騒ついてる?

失敗した……?


「静かに。では次の者」

******



鐘がなる。

取り敢えず、自己紹介は終わった。

この後は男子寮に行って荷物の整理…。


「なぁ!其方は、スケヴニングと言うのだな?」

「わっ!……えーと、君は」


「我輩はアビィ・シヴァ。其方はスケヴニング家の一人息子とお見受けする」

「あ、うん。そうだけど…」


癖の強い子だなぁ。

髪は紫色…、瞳は水色…。

資料で見た同年代の貴族の子供にこんな奴はいなかったから…。


「我輩は所詮平民である。…貴族である其方は、こんな平民に話しかけられることをどう思うか」


えー…。そんなこと言われても。

ていうか、クラスメイト皆んなこっち見てるな。…品定めっていうところ?

試されるのは嫌いなんだけど。


「別に。ここは“平等”だ。学園内にいる限り、身分は関係ない。だからどう思うこともない。……それに、俺は次期公爵になるからここで経験を培っていきたい。その為にも新たな友は必要だと思っている」


「なるほど。悪くない答えだ。王子も似たような答えをしていた」


…あー、王子ね、うんうん。

………ん?


「ふぁっ⁈おま、お前っ、殿下にもこんな質問してたのか⁈怖いもの知らずかよ!」

「…ははっ!其方はやはり愉快だな!……さよう。我輩は王子殿下にも同じ問いをした。いやー、面白いなぁ!」


いや、いやいや!

こいつマジでやべぇ!

学園内じゃなきゃ、絶対ぶった斬られてる!


「…賢い。其方ら三人は本当に賢いな」

「え?…三人って」


「A組のヒメナ伯爵令嬢殿にも同じ問いをした。其方と殿下とはまた違った答えだったが、実に興味深い答えだった!」


「『私は社会経験を積み、事業を立ち上げたいと思っています。その為にも、この学園は良い機会です。………貴方は何者であるか、利用価値はあるのか。教えていただいても?』と返された。うーむ、いや本当に」


「…失礼ながら。ヒメナ嬢は俺の婚約者だ。あまり近づきすぎないでくれ」


てかヒメナも入学してたのな。

一昨日手紙が届いていたけど、忙しくて読んでいなかったからなぁ。


「おっと。失礼。気をつける」


…はー。

ヒメナはそこんとこ解ってると思うけど。


「それで?つまり?」

「我輩と友達になってくれないかい?」


…でもなぁ。

平民、という事は身分がはっきりしていないという意味でもある。

こちら側に不利益になる未来も有るかもしれないのだ。

ヒメナが“あぁ”言ったのも、納得が行く。


数時間で権力者の子供達との接触、試すような問い。

言っていた特技と、あの何を考えているか読み取れない目!

…リスクが大きい。


「…安心して欲しい。我輩は単なる友として、其方と関わりたいと思っている。秘密は秘密として、探るような真似はしないと誓う」

「君がもしそれを違えたら?」



「我輩の命をもって償おう」


……ふむ。

一見大袈裟かもしれないが、これは本当に大切である。

次期公爵と、見ず知らずの生徒が関係を築くのだ。

もしシヴァが他国のスパイならば、俺が秘密を漏らして…という事もあり得なくない。

ま、そんなヘマしないけど!


反乱の意思があれば、金ヅルにされたら、ということも考えて置かなければならない。


……命ねえ。

後でギルに誓約書を用意させよう。

用心深すぎるかな?

うーん、ま、未来かかってんだしね!

俺は正しいッピ!



「よろしく、アビィ」


握手する。

よし、もう疲れた‼︎

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