第46話 入学式
「入学生諸君!よくぞこの学園へと参った!僕は学園長のニシキだ!そして…」
レースで顔の隠れた“男”が、声を響かせた。
暗い会場。ざわめく子供達。
……そう、ここは…!
「これより、賢者学園の入学式を行う!存分に楽しみたまえ!」
賢者学園の入学式である!
…いやー、もう精神年齢ヤバいけど、こういうのめっちゃ好きだからさー、もう楽しみで楽しみで。
学園長、は何故か顔をレースで隠しているが、まあ良いとしよう。イケボだし。
あれから準備やらなんやらやって、今に至るわけだが…。
出立の日、ソフィアがめちゃくちゃ泣いてしがみついてきて困った。
寮生活にはなるけど、なにも今生の別れではあるまいし。
あぁそう、ギルも一緒だ。
何故か『俺もルーク様と共に行きます』とか言って、入学許可証…もとい、合格通知書を見せてきた。
ルークサマびっくり。腰抜そうになった。
だって、推薦もらうのですら困難と言われる学園に、一般受験で合格してきたんだよ?
『え…受験日、間に合ったの?』と聞いたら、『まぁ、俺は公爵家の御子息の従者ですし…。いろいろと』と返されました。
なに?まさか脅してないよね?
ギルに限って裏口入学はあり得ないが、『受験させろや』とか普通に言ってそうで怖い…。
しかし、ここの制服はまあかっこいい。
特に夜のようなローブ。
裾の方が煌めいてるぅ。胸ポケットもついてる。時計やら入れるのだろうか。
「では、新入生代表に挨拶してもらおう!」
おっと、集中、集中。
残念ながら、俺は新入生代表になれなかった。
なぜなら、同級生に、ラピチナ国の…まぁ、つまり我が国の王子がいたからである。
びっくり。
同年代なんですよー、とは聞いていたが、詳しい年齢は開示されていなかったので。
まあ、うちは実質放任主義だしな。
教えられんよな、そうだよな。
くそっ!あわよくばなりたかったのに…!
ここで知らしめなくてどうする…!
閑話休題。
「…新入生代表、ゼファー・ド・ラピチナ」
なんとか思ってるうちに、挨拶は終わったようだ。
王子殿下を見てみると、これまた綺麗なお顔立ちだった。
桜色の御髪に、麦わら色の瞳。
シュッとした目元は、知的だ。
固く閉じられた口元は、化粧しているのだろう、桜のようで。
…はーん。このお方が。
でも、今まで見かけたことは無かったし、貴族間でのお披露目会的な催しもなかった。
なんでだろ?俺も無かったよな。
まぁ、ええかー。
「…では、これより、新入生への歓迎をしよう。……『開始』!」
学園長がそう叫ぶと、何処からともなく美しいペガサスが現れた。
ただのペガサスではない。
青い光でできていて、飛んだ後には星が残るのだ。
そして、高い高い音と共に、音楽を奏でながら少年少女が箒やら絨毯やらに乗って飛び出してきたのだ。
その後、数匹の小さなドラゴンに乗った煌びやかな衣装を着た青年達が現れた。
火を吹かせたり、俺たちの近くスレスレまで降下してくる。
ここでは勇ましい曲だ。
次に、箒に乗ったドレスを着ている少女達が、会場に光の蝶達を羽ばたかせた。
青系統の鱗粉が舞い、それがオーロラの幻を見せた。
それが静かで幻想的な曲と共に魅せられるのだから、もう。
つくられたオーロラのそのすぐ下に、月に乗った少年と少女が現れた。そっくりだから、きっと双子だろう。
その二人が、もっていた杖を振って、魔法をかけた。もちろん、その対象は新入生である俺たちだ。
途端、体が浮かびあがり、着ていたローブの胸ポケットに銀色の棒が現れた。
(この為だったのか!これは…杖?)
「…さぁ!新入生諸君!お楽しみ頂けただろうか⁈これこそが賢者学園の生徒の実力である!……君たちも彼らのように、立派な“賢者”になってくれることを祈っている!」
しん、と静まり返る。
音楽はいつのまにか消えていた。
「改めて……入学、おめでとう、皆さん。ようこそ、賢者学園へ……!」
《わぁあぁあああぁあ!》
歓声、歓声、拍手喝采。
それはしばらく続いて、鳴り止まなかった。
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