第42話 15年目
「おめでとうございます、ルーク様」
時刻は夜の八時。
「もう15歳ですか…。私と貴方が出会って、六年も経ちますね」
「んふふっ!ギル〜!ありがと〜!」
めったにデレないギルがデレてくれたぁ!
嬉しい〜!
改めまして、この俺、ルークは、
今日で無事15歳になりましたー!イェー!
誕生日だよ、たんじょーび!
公爵からは辞書と羽ペンをもらった。
マイ辞書!マイペン!
ツバキやケイシー先生、セス、ヒルト師匠からもそれぞれプレゼントとお祝いの言葉をもらった!
ツバキからは救急箱とネクタイピンをもらった。何故救急箱?
ケイシー先生には、なんと!魔法書!
ヒルト師匠には黒い革手袋!
セスには金の刺繍が入った赤いリボンをもらった!なんでもブランド物らしいけど。
そして…ハンナに、お手紙をもらった。
ハンナから直接もらった。
ハンナは今、男女の双子ちゃんと一昨年産まれた女の子の、つまり三児の母である。
「お手紙だけで申し訳ありません」とは言っていたが、
ツバキがこっそりと、「ネクタイピンはハンナからです」
とも言っていた。
「あー、幸せー!なんだろ、この世界での誕生日って、幸せしかないな」
「そうなのですか?」
ギルが紅茶を淹れてくれながら聞いてくる。
最近は茶まで淹れてくれるようになった。
別にいい、と言ったら、
「何でもできる従者を目指しているのです。セス殿も超えるほどの」
と言われた。
ふええん。セスがライバルゥ?俺は?
「ん。なんかさ、前世ではなかなか祝ってもらえなかったから」
「それは…」
前世の記憶は、不思議なくらいに色褪せない。
昨日のことのように…いや、数秒前のことのように思い出せる。
「だから嬉しいなーって、ギル?」
「あー、いえ、その」
「どしたん?挙動不審だけど?」
「お誕生日…おめでとう、ございます…」
(ハァァッ!顔が真っ赤!デレてる!)
「嬉しい!ギル、大好き!」
抱きついたらやめろと言われた。
物理的拒絶はされなかったけれども。
こーいうところ優しいよなあ。
***
バルコニーに出ると、風が通り過ぎていった。
(気持ち〜!風いいわ〜)
隣を見やると、
「ヒルト師匠⁈」
空をボーッと眺める師匠がおりやした。
「ん?あ…あぁ、ルークか」
「どうしたんですか、こんな夜に」
俺たちは今廊下のバルコニーにいるけど、師匠が気づかないって?
ちなみにギルは後ろに控えている。
「いや、な。最近悪夢を見るもんで」
「悪夢、ですか?」
ぽつぽつと、語りだす。
「人に話すのも恥ずかしいんだが…。かつての親友達が、俺を沼に引き摺り込もうとするんだよ」
「その親友たちは死人で、沼も血でできている」
「恨み言を言いながら、引き摺り込むんだ」
夢の詳細を話す師匠は、いつもと違う。
何か、違和感を感じさせる。
いつもは明るくて、厳しくて、優しくて。
教え子の前で弱音なんか吐かない。
さっきまでそうだったのに。
そんな師匠だったのに、今は。
暗くて、弱々しくて…。
そんな感じがする。
この短時間で、どうしたのだろうか。
じいっと師匠を眺めると、首元に銀の鎖が見えた。
「し、師匠!それ、ネックレスですか?」
「ん?あ、ぁあ。大切な行事の時は身につけるようにしてるんだ」
見るか?と聞かれたので、素直に頷く。
「ほら、これだ」
手にのせられたソレは、目玉の形の装飾だった。
中心に、虹色のガラス玉が嵌められた。
(白の客人の…![オラクル]の紋章…だよな?久しぶりに見た…)
「これ、これ…。失礼ながら、師匠は[オラクル]の信者なのですか?」
「ああ。だけど…。このネックレスをつけるたび、悪夢を見るんだよ」
「だけど、これを渡した人は、悪夢から解放されるはず、とも言っていて…」
「師匠?」
「…あれ?ルーク⁈」
今気付いたみたいな顔をされましても…。
今まで話していたよね?
「すまん!俺、たまに記憶がトぶんだ。余計なこと口走ってたか?」
「…師匠、変ですよ」
「…そうだな」
「…」
あ、いーこと思いついた!
「師匠!そのネックレス、貰えませんか?」
「え?俺は別にいいが…。これつけると、悪夢を見るんだぞ?いいのか?」
「ええ!少し解明したいことがありまして」
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