第38話 謎
「…白い服装の客人、か」
「父様、ご存じではない?」
「ああ。だが…」
公爵に事の経緯を説明したところ、意外な反応が返ってきた。
さっきの反応も併せ見るに、公爵はあいつらのことを知らないのだろう。
「だが、その様な服装をする者たちに、心当たりがないわけでもない」
「え⁈」
「ケイ様、もしかして…」
「宗教団体、【オラクル】だ」
(オラクル…本にも登場していた。まさか、あいつらが?バジルのいた時代から存在し続けているのか?)
「…セス、説明しろ」
「ええっ⁈俺がですか⁈」
「のうのうと寝ていた罰だ」
「うう…面目ない…」
しょぼくれているセス。
ぷぷぷっ!叱られてやんの!
「えー、【オラクル】というのは、先程ケイ様が仰ったとおり、宗教団体のひとつです。
信徒の数は約二万とされています。
信仰対象は三つ目の神、“セイクリッド”
二つの瞳は銀色だが、額にある三つ目は、虹色に輝いている。
真っ白な羽をもち、白いローブを纏っているそうです。
私は信徒ではない為、そこまで詳しく知りません。なにしろ、【オラクル】は謎に包まれているのです。
この情報も、資料にかいてあったんですか
ら。」
「それと、あいつらはよく問題行動を起こす」
公爵が腕を組み付け足した。
「「「問題行動?」」」
窓ガラス割ったり?
遅刻したり?
鉄バット持ち歩いたり?
制服着崩したり?
「問題行動のひとつに挙げられるのは…
民家に勝手に押し入った挙句、奇妙な魔法陣を描いて、住民を催眠にかけ信徒にしようとするとかだな」
(ヤベエ奴らだ…)
普通民家に押し入りますか⁈
謎の魔法陣描きますか⁈
催眠にかけますか⁈
人間性欠けてんな‼︎
「人間性に欠けてると取れなくもない奴らだ。目に余る」
公爵も同意見らしい…。
「で!そのケイ様が、騎士団にも関わらず奴らを罰せない理由が〜」
「会えないからなんですよ!」
………は?
会えないって?遭遇できないのか?
二万も信徒がいるというのに?
目に余るってことは、領内にも入ってきたことがあるということだよな。
「セス。少し黙れ」
「申し訳ありませんでした以後気をつけますでもこれ事実じゃないですか」
「ちっ。…奴らは俺達が後を追おうとした時に限り、行方をくらます。尾行しようが、怒声をあげ追おうが、必ず何処かで消えてしまう。…転移魔法でも使っているのだろうが」
へえ。あの公爵が!
ステラたちも捕まえられない存在…?
“セイクリッド”という神を信仰する…。
神?
死神?
あいつは銀の目をしていたか?
三つ目だったか?
名前があったのか?
俺たちに、こうやって関わってきてるのか?
…何の為に、わざわざこんな事を?
だって、バジルの本には『気をつけろ』と書いてあった。
攻撃してくるんだ。
死神が、秘密裏に転生させた者達を、此方で攻撃する?
ちぐはぐだな。
それとも、死神とは違う神が、此方に干渉してきている?
俺たちを消すために?
「ルーク様?…顔色が悪いですよ」
「え…あ、ギル。ごめん、なんだって?」
「ルーク。少し休んだらどうだ。ギルバートの言う通り、顔色が悪いぞ」
「…じゃ、お言葉に甘えて…」
「俺たちは何故【オラクル(暫定)】に公爵家に侵入されたか、調査する。かけられていた術のこともな」
*****
「おはようございます、ミハイル様」
動く影。
『……どうだった?』
「ついに手に入れました…!後一冊です!」
『…そうか』
「バジルの奴め、面倒な物を遺して…」
ピクリと、影が震える。
その影は、布に覆われた部屋の中にいるため、顔や姿形は見えない。
『おい…神の御前だぞ。乱暴な言葉は慎め』
「…はっ!……申し訳ありません」
『…その本があったのは、確かスケヴニング公爵家だったな?』
「はい…。魔法になかなかかからず、応戦までしてきて…苦労いたしました」
『…ふむ』
『ケイ・スケヴニング…か』
その影は、人知れず笑うのだった。
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