第34話 従者の在り方

事の詳細を聞いていた俺は思う。

これ、はたからみれば9歳児同士の喧嘩だな。

小競り合いじゃあ。


まあ、でも非はギルにあるかもしれない。

例え従者としての、スケヴニング家の使用人として正しい事をしていたとしても、客人に対しての不遜な対応は叱るべきで。

しかもうさぎの持ち方、首根っこガツリはヤバいかも。

うさぎ愛好家の方々にお叱りを受けるやもしれん。やだあ。


「ギル。これを聞いていると、お前の対応が失礼にあたるものだと受け取れる。

スケヴニング家使用人として正しい行いなのかもしれないが、それは時と場所、場合による。

その時出会したヒメナは、明らかにそうと判る客人だった。そのヒメナに対して、お前はどう対応した?ヒメナのペ…家族に、どんな行いをした?」


ギルは目を見開く。

俺の言いたいことがわかったようだ。


「お前は『ギルバート』という個人だ。だが、その『ギルバート』としての言動を自由にできるのは、個人の権利がある時だ。

今は一個人ではなく、『ギルバートという名の使』なのだから、使用人らしい態度と節度をもって立ち居振る舞わなければならない。わかるか、ギル。」


「…はい。…申し訳ありませんでした、ヒメナ様。数々のご無礼をお詫び致します。」


「えぇ。ヒノデは無事だったから良いけれど、今後気をつけてね。…貴方の無礼を許します。…私にも、悪いところはあったし。ごめんなさい。」


うんうん、これでよし。

一見厳しそうに見えるが、これは必要なことなのだ。

貴族と従者。

立場は、権力の大きさは明白である。

貴族とは、己だろうが誰のだろうが従者に舐められてはいけないのだ。

どれだけ貴族が酷い当たり方を、厳しい言葉をかけてきても、従者はただ耐えるのみ。

それが正しい従者の在り方。


「ルーク様も、申し訳ありませんでした。私の態度が不遜でした。どうか、お許しください。」

「うぇっ⁈…あ、あぁ!これから気を付けること。…それじゃ、気を取り直して…。」


「いざ、図書室へ!」


***

「えーと、確かこのあたりに…あった!」

「ルーク、それが例の本?」


「うん。相変わらず奇妙な絵がついてるな。」

「ルーク様。何が起こるかわかりませんので、どうかお気をつけて…。」

ギルに忠告されながら、俺たち三人はページを開く。



「こっ、これは…!」

「なに?なんて書いてるの⁈私英語はダメなのよ!」

「ちょ、ヒメナ様、危ないですって!」


「……訳すとこうなる。」

と、俺は内容を読み上げる。



【やあ、子猫ちゃん!調子はどう?わたしは元気だ!なぜなら、君たちにあえたからね!この内容が読み取れるということは、君も…もしくは君たちも、転生者なのだね。これは簡単な英語で書いているので、これから先の情報は読み取り難いと思う。なので、わたしの魔法をかけておくよ。翻訳の、ね。】


…ちゃらい。

これ、原文では『子猫』という意味の『kitty』が使われている。


…先が不安である。

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