第30話 違和感

––––《イモータル》

現代に受け継がれる文化が生まれ、人々は「発展」を覚えたとされている。

この頃使われていた文字は、古代文字と言われている。

A B C … などの26文字で構成された文は、壁画などにも使用されている。

その言葉の殆ど、発音も、今、歴史学者に解明されており、しかし使用場面は限られている。

昔からの行事や、物事の大切な場面に使われており、《賢者学園》でも科目として取り入れられている。

そして、この文字を伝えたとされている人物が、最近になって発見された。

《バジル》と記されたこの者こそが、古代文字を伝えたと、実際に壁画などに書かれており––––



ここまで読み、俺は震えた。

(なんで、アルファベットが?…今使われているのは、《日本語》なのに…。古代では、《英語》が使われていたのか?…おかしい。)


鼓動が早まる。嫌な汗が、じんわりと手のひらを濡らす。

(英語と日本語では、あまりにも違いすぎる…っ。普通、ありえない。日本は、漢字があり、かな文字があり、そこから日本人は言葉を得た…。英語も、エジプト文明が起源とされているのに…。)


まさか、まさか…

(この、《バジル》も、転生者なのか?死神はまた嘘をついたのか?)

なにか、おかしい。何故隠す必要があるんだ?

どうして昔にも転生者がいたんだ?


どうしようもない、違和感。


「…ルーク様?どうしたんですか、顔色が悪いですよ…?」

「…ギル…。図書室に、行かないか。」

出来るだけ、明るく喋る。


「いいですけど…。」



〜in図書室〜

「ギル、この本はどこから取ったんだ?」

「え…?あぁ、【古代文明の歩み】ですか。ええとたしか…三列目の2段目でしたかね。そこだけ本が少なくて、覚えてました。」


走る。

(三列目の、2段目…。ここか!)

ギルの言う通り、そこの本は異様に少なく、数えるほどしかない。


「…まじか。《バジル》著書の本がある…。題名は…アルファベット表記!」


「どうしたんです?…なにか、ありましたか。」

「うん、ちょっと…。あ、ギルは向こうで好きな本を探してきなよ。」

「はい?でも…」

「さ、さ!」

ギルを無理矢理引き離し、俺は本を見る。


題名…題名は、

【World record】

…【世界録】か!


裏表紙を見てみると、そこに、人間の目のような模様が描かれていた。しかしそれは、もとの裏表紙に絵の具で上塗りした様なもので、奇妙だった。


(なんだ、これ…?人間の、目?瞳は、虹色…。)

パラパラとページをめくる。

「…?この本、書かれたのはいつなんだ?日付が書かれていない…。」


全て、英語。

「いくら前世で英会話教室に通っていたとしてもな…。これを読み解けと言われると…。」

「………前世?」


「…あ、ギル…」

「前世って、え?…エイカイワキョウシツって?」


(…うわ。聞かれた!……なあんで、今聞かれちゃうかなあ。)


「…あー、ほら、音読!これ、読んでたの!その中のセリフだよ!」

「………そんなはずないです。だって、それ、古代語で書かれていますよね?俺たちはまだ、ケイシー先生に習っていません。なのに、読めるんですか?」


(最悪だ…)

「…んーと、ほら、ええと…」

「……ルーク様、いったい、それは、なんなのです?そもそも…そう、そもそも。」


「貴方は、誰なんですか……?」

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