第27話 初日でも!

カカン!

カキン!


今日は練習場に響く木刀の音は、いつもより一人分多い。

それはギルバート(長いのでギルと呼ぶことにした。)が俺の従者になったからである。


「ぬあははは!初めてにしては筋がいいな!ギルバート!」

「!…よっと。ヒルト殿。俺は剣術の練習、初日ですよ⁉︎なんでこんなっ…と、キツイです‼︎」


(かわいそうにギル…。師匠の洗礼?を受けたな)

「あぶなっ…。ギル!俺と一緒に師匠に攻撃しよう!連携だ!」

俺は師匠の攻撃を避けながらギルに声をかける。


「!はい!」


「「せーの!うらあっ!」」


ガガン!

「ふはは!まだまだだな!こんな連携崩すのは造作ない!」

バシン!


「「うっ!」」

俺とギルは飛ばされる。

……強い。


「今日はここまで!二人とも、連携は初めてにしてはなかなかのものだった!そして、ギル!初日からご苦労だったな。明日から本格的に教える。用意しておくように。」



かつかつかつ。

ケイシー先生が、黒板に文字を書く音が響く。

「…それでは、ギルバート君。我が国では、どんな産業が主でしょうか。……ただし初日ですので、貴方の意見を述べてください。」


「ええと…本で読んだのですが…。この国では、主に農業が発達しております。また、最近では工芸や商業にも力がはいっている…と。」


「…素晴らしいですね。その通りです。しかし一方で、鉱山資源などは不足しており、他国に頼る形となっております。なのでそのことについても話し合いが行われています…。」



授業が終わった。これからはもう自由時間である。

(それにしても凄いな…。初日からこの成績。思っていた以上に優秀だ。)


「すごいな!ギルは!とても優秀だ。」

「ありがとうございます。でも、まだ従者としての教養は足りていませんですので…。」


ギルは少しはにかむ。

教会では大人びて見えたが、こうしてみると、年相応の表情である。

「そうだ、ギル。ツバキのところへ行かないか?お前あいつに、聞きたいことがあるんだろ?」

「…!ええ。」


(ツバキか。確かにあいつは、医師にしては違う方面の知識も豊富だよなぁ。)

「そういえばギルは、どうして《朝日の民》について知りたいんだ?」

「あぁ…それは––––」


ばんっ!

「うわっ!」

医務室の扉を開けようとしたら、人が飛び出してきた。

「あぁっ!待って!」

続いて出てくるツバキ。


「あぁ…行ってしまった…。」

項垂れるツバキ。

「どうした?ツバキ?」

「あの、ツバキさん…。」


「あ…。ルーク様に、ギルバート君…。もしかして、《朝日の民》について?」

目が…死んでいるぅ‼︎

「そう思ってたんだけど…。大丈夫?」


「あの、ツバキさん。無理なら、別に俺は…」

「ううん、大丈夫。さ、入って…。」

妙に元気のないツバキである。

なんかいつも「こわい」からこうなると「不気味」である。


「こほん。…えー、気を取り直しまして…。お二人は《朝日の民》についてお聞きしたいんですね。」

「はい。」


––––《トゥガ・ナリゥ》

《朝日の民》は、レモンイエローの瞳と髪をもちあわせる少数民族です。

彼らは北方に住んでいます。

動物を狩り、木の実を採って暮らしているんです。

《朝日の民》の特徴は、先程も言ったように、容姿はもちろんなのですが…身体能力の高さでしょう。

木々を飛び越え、銀狼を手懐け、水の中をはしる…


そんな彼らは妖精と共に生きています。

妖精を崇め讃え、妖精の歌を歌い…。

あまり加護を受けるといった事例はないようですが、それを常に信仰しているようです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る