第25話 教会なう

「お久しぶりです!ルーク様!今日も今日とて可愛らしいですね!」

「ゲェッ?!ツ、ツバキ…」


ツバキは俺の天敵である。

なにかと俺のことを可愛い可愛いと言ってくる。

そういえばこのところ見かけていなかった。


「ひ、久しぶり…ツバキ。最近見かけていなかったけれど、どうしたの?」

「あぁ…。医師の講習会というか…。最新端の医療を学んでいたようなものです。」

へえ…


「…そう。ところで、どうしてここに?俺、父様達と従者を探しにいくのだけれど…。」

「?そのご主人様にお誘いを受けたのです。」


(こうしゃくうううう!)


俺はツバキに見えないように落胆する。

別にツバキ自体が嫌いなわけではないのだが、推しが強いのだ…。

そこが苦手。

いい奴だと思うし、メイド(ぽやぽやソフィア談)

の中でもなかなかに人気らしい。

分かってはいるのだが…。


「さ!ルーク様!ご主人様のところへ参りましょう!」



「教会?」

馬車の中で公爵の言葉を繰り返す。

「ああ。俺の支援している教会では、子供を引き取っていてな。そこに良い人材がいると思うのだが。」

「…なるほど?」


(教会か…。この世界にも宗教は存在するんだな。まあ、あの死神のことだから…。)

がたがた。馬車が揺れる。

(教会の子供ということは、孤児なのか?警戒心をといてくれると良いんだけど。)

ガタン。馬車が止まる。教会についたのだ。


「行くぞ、ルーク。」

「あ、はい!」


教会の前には、神父であろう男性が立っていた。

「久しいな、ナヤサム神父。」

「これはこれは!お久しぶりで御座います、閣下。」

「元気でいたか。…今日は息子の従者となる者を探そうと思ってな。」

「左様でしたか…。勿論ですとも。我が教会の子供達は、皆いい子です。…辛いことも多かろうに。」


ナヤサム神父、は一礼して俺たちを教会へと案内した。

広い。

建物も広そうだったが、中も開放感が溢れている。


「それでは、閣下。そして坊っちゃま。こちらです。」

連れて行かれたのは教会の奥の方。

いくつかの扉がある。


「ええと、どういたしますか?このまま手続きを進めるのも宜しいのですが、従者となる子供は…」

「あ、じゃあ俺、歩き回って良いですか?その時に決めたいのですが。」


ルーク。と、公爵が言う。

「大丈夫です、父様。ここは教会ですし。ほら、同行しているステラも連れて行きます。」

「…しかし。…ならばツバキも連れてゆけ。あいつはその為にも呼んだのだからな。」


「………了解です。」



きゃあ〜!

あはははは!

ドカッ!バタバタ!

(凄まじい音が聞こえる…。)


「…失礼するね。」

神父に案内されたのは、恐らくここで一番広い部屋。

「……こんにちは、みんな。俺はルーク。」

目の前には、十数人の子供。

「るうく…?」

「そう!今からみんなと遊ぼうと思って。よろしくね!」


「「「やったあ!あそびあいてがふえた!」」」


ドガシャン!

バタバタ!

わあはははは!

(うう、厳しいぞ、これ。)


「静かに!」

凛とした声が響いた。

ツバキでも、ステラでもない声。


顔をあげると、俺と同じくらいの少年がいた。

栗色の髪に、レモンイエローの瞳。

そばかすのない綺麗な肌。

異国人風の顔つき。


「みんな、静かに。ルークさ…んが、困っているだろ。それにオツキの二人もお前達に飛びかかりそうだ。」

「ええー。いいじゃん、」


「「「ギル」」」


子供達の声が重なる。

ギルというらしい。もしくは、愛称か。


「あーと、ありがとう、ギル。」

「いえ。「遊びに」来たのに、楽しめていなさそうだなあと。」

(ん?何か含みのある言い方だな。…ほう)


「あー俺、外を見たいなあ。ギル…に、案内してほしいなあ。」

「は⁉︎俺ですか⁉︎」


in外なう

「ギル…君?君、何か含みのある言い方してたよね。」

「ギルバートですが…ギルでいいです。…そうですね、貴方は御貴族様でしょう?アイツらがアナタサマに飛びかかって、首を切られたらたまりませんしね。」


「ギル、貴族嫌い?」

「ご想像にお任せします。」


(ほうほう…俄然興味が湧いてきた。もう少し、探ってみるか!)


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