第22話 ヒメナの話 〜ヒメナside〜

みなさんこんにちは。

私、ヒメナと申します。


うん、転生者です。

普段の口調では話さないので、そこんとこよろしくです。


この世界にきたのは3年前の、ヒメナが6歳の時。

庭の池で遊んでたら、溺れてしまって…。

ちょうど池で遊んでいた時に前世を思い出しました。

地獄かよ! と思ってしまいました。


なんでかというと、元の世界で私、溺れ死んだんです。

海でした、そこは。

確か、女の子を助けようとしたんです。

「––––たすけてー!!」

って、声がして、そちらに目を向けると、衝撃の光景でした。

小さな、まだ9歳ぐらいの女の子が高波の迫る中で、もがき苦しんでいました。

きっと波に流されたのでしょう。


救助は待てませんでした。

きっと他人は、愚かなことだと言うでしょう。

でも、苦しんでいる少女を、どうして眺めていられましょう。

私は水泳部で、実力もあったので、すぐに海へ飛び込みました。


冷たかった。

夏、まだ昼だというのに、妙に黒々としていて、怖かった。

浮き輪を持っていき、少しずつ少女との距離は近づいていきました。

少女は気を失ってはいませんでした。


「偉かったね、もう大丈夫。」

などと言い聞かせ、浮き輪を渡し、浜へ戻ろうと泳ぎました。


行きは早かったのに、戻る時は疲れてしまっていました。


でも、救助の方が途中、来てくださいました。

天の使いかと思いました。

その方に少女を引き渡すと、一気に力が抜けました。

駄目だと思いながら、でも、強烈な「眠気」に逆らえず、私は目をとじました。


その時に、死んだようです。

気がつくと、視界には半円球の宇宙が広がり、銀髪の少年がいました。

死神だと名乗られました。


光に包まれた先は、水だらけ。

パニックになったけれど、大きな手が、私を救いあげてくれました。


どうやら伯爵家の娘になったようでした。

元の私は気が強いので、性格が変わったと思われないか心配でしたが、元のヒメナ…いえ、私も、あまり変わりないそうでした。


父のチャーリーは陽気な人で、軽い感じもありました。ま、いい人だったんですが。

母はルーシーといい、寡黙な人でした。あまり表情が変わりませんでしたが、普段の一挙一動から、家族、使用人を想っていることが伝わっていました。

兄もいました。

ローディといい、父に似て陽気な人でした。

私を救ってくれたのも、兄でした。


見合いの話がきて、まあいいやと引き受けました。

そしたら同じ歳の男の子ということで、少し嫌でした。

だってその年頃って、ふざけてるんです。

だから会ったとき、あまりに綺麗な少年で、驚きました。

話をしていても、知的な感じで。

少しマウントを取ろうかなぁ、と本の題名をだしたら、【少年の日の思い出】(ヘルマン・ヘッセ)の「生涯一度は言いたいセリフ」をだしてきて!

転生者?と思い、「生涯一度は言いたいセリフ」の第二位を言ったんです。

そしたらビンゴ!


転生者でした。

…そして今に至るというわけです。

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