第20話 Fiancée? 

「はじめまして、ルーク君。」

んお???

執務室に入ると一番に、背の高い男性と目が合った。

側には公爵も居る。

「ルーク。こいつは伯爵家の現当主、チャーリー・マーチェントだ。俺はチャーリー…チェルと同級生でな。」

「いやあ、話には聞いていたけれど、本当に賢そうな子だね。うん、さすがケイの子供といったところか。」

え?え?勝手に話を進めないでくださる?


「ルーク。お前ももう9歳だ。そろそろ婚約者を決めなければ、とな。」

「えと…お話というのは、それですか?あのでも、突然言われても…。」

戸惑っていると、チャーリー…伯爵殿が割り込んできた。


「いやいや、ルーク君!婚約といっても、同じ年頃の子と友達になる様なものだよ!うちの子は可愛いし、物分かりもいい。ね、君にとってきっとよい存在になると思うんだよ。だから、ね?」

「え?え?…うちの子という事は…?」


「私のことです。」


声がして、伯爵の背後から少女がでてきた。

伯爵と同じ、少し変わった髪の色をしている。

前髪にあたる部分が長いのだろう。そこを三つ編みにし、金色の髪留めでとめて耳の前に垂らしている。それ以外は後ろにながしているようだが、それも軽くウェーブがかかっている。

翡翠の瞳は少しつりあがっているが、美人と育つであろう風貌だ。


「おぉ、ヒメナ。ルーク君、この子が君の婚約者として候補に挙げた僕の娘でね。ストロベリーブランドの髪が美しいだろう?僕とおそろーい!」

「チェル…みっともないな。ルーク。この子がお前の婚約者となるヒメナ・マーチェントちゃ…んだよ。」


「ケイがちゃん付けを⁈(byチャーリー)」


(…ヒメナ?俺の婚約者だって?)

「あのう、でも。ほら、いきなりこんなこと言われても…ほら、ヒメナちゃんも、ねえ?」


「私は別に構いませんが。」


(即答かよ!)

「それでは、ルーク。ヒメナちゃ、んと、庭園を散歩してきたらどうだ。俺もこのバ…チャーリー殿と話がしたいのでな。」

(公爵!こんな時にそんなこと言ってくれるなよう!あとナチュラルにバカと言おうとしたな)




木々の間から差し込む光。

小鳥のさえずり。

あと不機嫌そうな婚約者(候補!まだ!)

「ええと…ヒメナ、ちゃんは何が好きなの?」

「ヒメナでいいわ。好きなのは乗馬とお菓子作り。貴方は?ルーク様。」


「んおお…。ええと、俺は…本を読むことかな。」

「ふうん。そう。」


……

………気まずいよお。

なんか淡々としているなぁ。

どうすりゃいいのかな。


「どんな、本を読んでいるのかしら?」

(んおおおお!話しかけてきた!)

「本…。えと、【世界の魔物】とか、【本当にあった⁈へ〜んな話】とか、あるものを読んでる。」

「ふうん、私は【商業録】とかよ。」


(え?それケイシー先生基準の「難しい」に分類される本じゃん。マウント取ってきたんですか?ねえ⁈…へえ、ふうん。じゃあ言ってやりますよ。どうせ地球生まれ前世持ちしかわからんけどな‼︎)


「…ヒメナ。『そうか、そうか、つまり君はそんなやつなんだな。』」


ずがががーん‼︎

ふっふっふっ!この表現にピッタリの顔をしているなあ?ヒメナァ!

俺にマウントをとるからだ!

こう思っていると、ヒメナは体を震わせていたと思うや否や、バッと顔を上げ、こう言った。


「『ごん、お前だったのか。いつも、くりをくれたのは。』」



ずがががん⁉︎

今度は俺に衝撃がはしった。


この胸の高鳴り…!(ドゥクシドゥクシ)

目の前にはなんか【ごんぎつね】の台詞をいう美少女…!

俺、いったいどうなっちゃうの––––⁉︎


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