第15話 解決

ガキン!

ステラの剣の鞘と、男の剣がぶつかる音。

ステラは剣を抜いていないが、男は刀身をだしている。


「…あぁ、もう!ゲスのくせに、どうして闘い慣れしてるのか!…やぁっ!」

ステラは剣のつかより少し上の部分を握り、相手の足下を狙う。

ヒュッ

男は跳びのく。

「ゲスだからだよ!!……お嬢ちゃんも、年頃にしては…!おっと!」

ステラの突きを寸前のところで避ける。

「…年頃にしては、荒々しいねぇ?女は、騎士になんか、なるのかぁ⁈」

「…くっ!」


男がステラの両腕を後ろで拘束し、首元に剣をあてる。

「…もうすぐ俺の仲間が来る。護衛が追ってこないよう、散らせておいたんだが…。お前らが来たという事は、あいつらは倒されたのか?それとも…。まあ、いずれにせよ、仲間はまだいる。」

金に飢えた仲間が。

と、男が囁いたその時、ステラは左足を大きく上げ、男の股間めがけて靴の踵をぶつけた。

金的‼︎

男に1000のダメージ‼︎

ていうかクリティカルヒット‼︎

「ぐっ、ああああああ!…てめえ、き、金的は、」

「卑怯だとでも?…子供の髪掴んで引き摺る方が、酷いし悪いだろ‼︎」

男はのけぞり悶えている。

その男を、どこから出したのやらロープで縛った。



そんな様子を俺たち二人は、少し離れたところから見ていた。

「…ステラさん、容赦ない、ですね…。いや、あそこ蹴られたら、気絶する…。」

「…うん。ステラ、こがたけんみたいで、カワイイなとおもってたけど、こわい…。」

言ってると、その張本人が振り向いた。

「あ!ルーク様!ケイシー殿‼︎脱出できたのですね、良かった〜!」

「「ひっ」」


ステラは足早に俺のそばへ来て、先程の先生と同じようにひざまづいた。

「…ルーク様。私の注意力が散漫だったせいで、貴方様は誘拐されてしまいました。本当に、申し訳ございません。この罪をどう償えばよろしいのか、検討もつきません…。」

「ううん、ステラ。あなたはゆうきをもって、おれをすくってくれた。せんせいと、ともに。ふたりとも、ありがとう。」

「「ルーク様…。」」

「さ!ほかのやつらも、くるかもしれない。はやくにげるかどうかしなきゃね!」

「…はい。ステラさん、」

「ええ、ケイシー殿。」

「「フルボッコにしましょう!」」





30分後…。

ステラの剣と先生の魔法で、男の仲間と思われる輩達は気絶していた。

(えげつねぇ…。これが大人のチカラ…。)

「え、えーと、そろそろじかんだし、かえる?」

「…あ、そうでした、一時間…。」

「うう…。せっかくのルーク様とのお出掛けがぁ」

「で、でもさ!おれのこと、よくあんな…みじかいじかんで、みつけられたね。すごい!」

「ああ!それは、ケイシー殿の案なのです。」


〜回想〜

「…こういうのはどうでしょう?屋根の上から男の仲間達を探すのです。罠を仕掛けてくる程ならば、余程用心深く、根城の周囲を見回るはず。…それでも見つからなければ、増援をして、近くの空き家などをしらみつぶしに調べる、など。…もう通信魔法で騎士団には連絡を入れております。…公爵様も、仕事を切り上げてくる、と…。ええと、なので、このように、致しましょう。」

「…なるほど、了解です。必ず––––…。」



「…このように、ケイシー殿が作戦を立ててくださり、短時間…たった30分でルーク様を発見することができました。」

「おお!すごい!」

「…いえ、こんなの、本当に運がよくて…。いえ、ありがとうございます。それと、ルーク様。」

先生がかがみ、俺の目線にあわせる。


「先程の、続きです。ありがとうございました。僕が、…ええと、未来への歩みを止めてしまっていたことを、教えてくださり、感謝しているのです。」

「えっ?おれが?え⁈」

「はい。貴方様が。」

「そっか、そっか!うん、せんせい。あのね、おれ、せんせいのことダイスキ!やさしくて、ていねいで、なんでもしってて、いがいとつよいところがあって。だから、ね。」


「せんせいに、もっといろいろなこと、おしえてほしいんだ。」


「…!…はい。僕、こんな…色が無い様な姿で、怖くて、恥ずかしくて。でも、貴方様と出逢えたことで、最近は人の目にも慣れてきたのですよ。」

「そう!それはよかった!ねえ、せんせい、ステラ。きょう、ほんとに、たのしかったあ!」


「「それはよかった‼︎」」




その後、俺たちは迎えに来たセスと、他の騎士達と共に帰路へとついていた。

セスには三人とも叱られたし、きっと公爵にもカミナリを落とされる。それは確定事項。正直やだ。

でも、今日の事で先生との絆は深まったと思う。

だから、今日は良かった日だったのだと、そう思うことにする。

(ポジティブ思考でいこうっと。)

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