第7話 My Birthday.

「お誕生日、おめでとうございます!ルーク様!」

俺は二歳になった。

転生して約二週間。

「うあー!」

今日は屋敷で俺の誕生日パーティーが盛大に行われていた。


(まあ、屋敷の人たちだけなのだけど。)

「ルーク様…。もう二年ですか。私は嬉しいですよ…。」

ハンナが涙ぐむ。

「は、はう、はんな。なかないでえ。」

(よし、上手く発音できた!)

「…!今、はっきりハンナと…!ああっ!」

そんなハンナの背中をさするツバキ。


「ほら、ハンナ。ルーク様が困ってしまわれるだろう。今日はおめでたい日なんだから、笑顔、笑顔!」

(…いい奴なんだろうなあ、ツバキ。でも何故俺が関わると変になる…)


「ちゅ、つばき。あいがとう。」

「へぁ?今、俺の名前を、ルーク様が!」

今度はツバキが泣く番だった。


パーティーは俺の体に配慮して、昼から行われていた。今はもう、夕日が昇ろうとしている。

(公爵、来ないのかな。)

なんとなく思ったことが、心をツンと刺す。

(ま、祝ってもらっただけでも嬉しいし。)

そんなことを思っていると、会場となっていた部屋の扉が勢いよく開いた。

「ルーク!」

(この声は…!)

「としゃま!」

公爵は青い、いわゆる貴族服を着ていた。後ろにはオレンジ髪の従者が、たくさんの箱を抱えている。

「お前の誕生日ときいて、祝い品を持ってきた。子供の喜ぶと思った物なのだが。」

そういうと、従者を前にだす。

「え?…あっ、はじめまして、ルーク様。わたしは貴方様のお父上様の従者・側近を務めさせていただいております、セスと申します。以後、お見知り置きを。それで本日は、ルーク様の二歳の誕生日ということで、お父上様からプレゼントがございます。こちらです。」

「えー!いっぱい!あいがとう‼︎」

(ひい、ふう、みい…10個⁈)

すると公爵はしゃがみ、俺の頭に手を置き、言った。

「…お誕生日おめでとう、ルーク。」








『お誕生日おめでとう、橋本君!』








「うん…あいがとう!としゃま、は、はんな、つばき、せす、あと、あと、といかくみんにゃ!」

「ああ、今日を楽しむことだ。」


それからすぐに、ハンナにプレゼントを開けてもらった。なにせ10個もあるのだから。

「わあ、凄いですよ、ルーク様!」

(おお!クマのぬいぐるみ、木馬、積み木、おもちゃの剣、トランプ…。三冊の絵本に、二つの服。…すごいな。)

こんなにプレゼントをもらうのは、初めてだ。

「…ご主人様、本当にルーク様がお好きなんですねえ。よかった。」

「つき?」

(あの態度で?ま、こんなにプレゼントくれたけど。祝ってくれたけど。…けど。)

でも、なんか、ひっかかる。

「ルーク様、今度改めてお礼をいたしましょうね。」

「あい!」

だけど、でも、俺は今、幸せだ。

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