第4話 夜凪
星の輝く夜空の下。真っ暗な海を横目に走る夜の世界はとても…とても…。
「さっぶぅぅぅぅぅ!!!寒い寒い寒いぃーっ!
なぁ、ハルっ!もう今日はどっかに泊まろうやぁ!!!寒いよぉー!!!」
「…アキが酔っぱらって『今夜は泊まらんと出発しよー!』って言い出したんやろ」
夜の潮風は予想よりも冷たかった。というか、ツーリングが結構冷えるものなのだった。最近はバイク乗らないから、すっかり忘れていた。
アルコールで火照った身体はすっかり冷めて、僕はガタガタ震えながら、ハルにしがみつく。
「あー、もう。わかったわかった。
ほな、
サァーッと路肩に寄せて、バイクを停めると、スマートフォンを取り出す。
風が無くなると、空気はそんなに寒くなくて、ホッとした僕はぼんやり夜の海を見つめる。昼間はキラキラしていた海が嘘みたいに真っ暗だった。気を抜けば、そこに吸い込まれてしまいそうで…。
「――ちょーっと通り道からは外れるけど、十分くらいのところにネカフェあるわ…って、おい!俺に探させといて、何をぼんやり
「アイテテテテテっ!ごめんごめんごめん!
悪かったから、ほっぺた引っ張らんといて!!」
引っ張られて顔をあげると、空には丸い月と無数の星。街から少し離れているからか、やけに明るく感じた。
…どうしてだろう。海の方が近くにあって、知ってるもののはずなのに、夜の海より
「…もうちょっとだけ」
ふっと、頬をつまむ指が緩んだ。
「もうちょっとだけ待ってな。ごめんな、こんなところに連れてきてしもて」
ハルはうつむいて、そう呟いた。部屋から無理に引っ張り出したのは、旅行に連れ出したのは僕の方なのに。
でも、そのまま黙ってエンジンをかけた彼に僕は何にも言えなかった。どんな顔をしているのか分からなくて。僕も黙って彼の腰に手を回した。
ハイビームが前を照らし、真っすぐの道が浮かび上がる。再び、バイクが走り出した。
僕は彼に掴まる腕にそぉっと力を込める。何だか少し、彼の背中が小さくなった。そんな気がして…。
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