22章 王城跡の幽霊騒動
第231話 本当に挨拶したいのはスズハ兄
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ぼくのいる城のすぐ横に、なんと女王のトーコさんが真新しい王城ごと引っ越してきてはや数ヶ月。
最近、ぼくは毎日疲れていた。
その理由は単純明快。
なぜだかぼくが、トーコさんの謁見に付き合わされるからで──
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ドロッセルマイエル王国の遷都と、それに伴って建築された新王城をお祝いするため、新王城には各国の使者がひっきりなしに訪れていた。
そして今日も。
ぼくですら名前を知っている遠方の大国からわざわざ出向いてきた老年の外務大臣が、新王城の謁見の間でトーコさんにお祝いを述べている。
「トーコ女王におかれましては、大変おめでたく──」
「あーうん、お陰様でね。ありがとー」
いかにも老獪という雰囲気が滲み出ている外務大臣にも自然体で応じるトーコさんに、やはり生まれながらの王族は違うと再認識する。
根が庶民のぼくには到底無理だ。
そして現在ぼくは、玉座にいるトーコさんの斜め後ろに立っているわけだけど。
……フツーに考えて、ここって宰相とかがいる場所だよねえ?
しかもさっきからあの外務大臣、ぼくの方をずっとチラチラ見てくるんだよね。
居心地が悪いったらありゃしない。
「──さてと、では辺境伯にもご挨拶を──」
「いやいや。スズハ兄への挨拶は、ボクが代わりに受けておくよ」
「いえいえ。辺境伯は大陸を救った英雄でありますし、ぜひ直接ご挨拶を」
「その言葉はありがたいけど、スズハ兄も色々あって大忙しだからさ」
「ですが──」
ちなみに大忙しのはずのぼくを、謁見の間まで毎回連れてきてるのはトーコさんである。
まあ実際は忙しくないからいいけど。
結局押し問答の末に大臣を追い返したトーコさんが、んーっと背筋を伸ばして一言。
「よっしスズハ兄、今日の謁見はコレで終わり! 明日もよろしくね!」
「……そもそも、なんでぼくココに立ってるんでしょう?」
ぼくの純粋な疑問に、トーコさんはふふんと笑い。
「やっぱりスズハ兄も座りたくなった? そりゃあずっと立ちっぱじゃ疲れるもんねー、だから最初から椅子を用意しようって言ったのに。すぐに用意させるから──」
「違いますからね!?」
ウキウキしながら侍女を呼ぼうとしたトーコさんを慌てて止める。
謁見で女王の横並びに座っていいのは、王様だけなんですよ?
「そうじゃなくて、普通この位置には宰相とかが立っているのでは?」
「それはホラ、ウチの国ってクーデターとか粛清のせいで宰相がいないから」
「サクラギ公爵がいるじゃないですか」
「まあ色々あるわけよ。パワーバランスとか」
「そんなもんですか」
そう言われてしまえば、貴族政治の内情なぞ知らないぼくは頷くしかない。
でもそれにしたって、トーコさんだけで挨拶を受ければいいわけで。
「だいいち、辺境伯のぼくがトーコさんと一緒にいる自体、意味が分からないです」
「なんでよ。合理的じゃない」
「お祝いの挨拶を受けるのは女王たるトーコさんでしょう?」
ぼくがそう言うとトーコさんが、なぜか大げさに肩をすくめて。
「分かってないわねー。あいつらみんな、ボクへの挨拶なんてものはただの名目だから。本当に挨拶したいのはスズハ兄」
「んなバカな」
なにしろぼくは、なぜか辺境伯になってしまっただけの平民である。
各国のお偉いさんが、挨拶したいはずなんてないのだけれど。
「まあアイツらも、スズハ兄に会うことすら出来ませんでしたーじゃ、外交使者としてのメンツも立たないだろうしさ。だからこうして、ボクと一緒に会わせてあげるってわけ。良い考えでしょ?」
「はあ」
貴族の外交だの政治だのの世界は、いまだにさっぱり分からない。
気疲れで凝った肩を回しながら、そんな風に思うぼくなのだった。
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