14章 エルフの里、吸血鬼との最終決戦
第147話 仕方ありませんよ。兄さんですし
光線の指し示す先に何があるかは分からないけれど、行ってみようという話になった。
理由は簡単。
その先に、エルフやうにゅ子に繋がるヒントがあるかもしれないからだ。
とはいえ女王であるトーコさんは、当てもない旅で国を長期間空けるわけにもいかず、泣く泣く王都へと戻っていったけれど。
聖女様の計らいで、トーコさんの帰りの護衛は聖教国から出してくれるとのこと。
そういえば、ユズリハさんはずっとぼくと一緒でいいのかな? 謎だ。
****
聖教国を出て数日、国境を越えたぼくたちは山を越え、深い森の中を歩いていた。
ぼくの頭の上には、うにゅ子が宝玉を持って乗っている。
なので謎の光は出っぱなしだ。
「ねえ、うにゅ子はエルフとどんな関係があるの?」
「うにゅー?」
「ひょっとして、うにゅ子はエルフなの? それとも吸血鬼なの?」
「……うにゅー?」
要領を得ない返事。恐らく自分でも分かっていないのだろう。
頭の上で困ったように首を捻るうにゅ子の様子が、声からも伝わってくる。
ちなみに現在うにゅ子は、大きめのフードを目深に被って顔を隠していた。
光の指し示す先に、うにゅ子と対立する存在がある場合を想定してのことだ。
もしもこの先にうにゅ子の宿敵がいたとしても、顔を隠していればこちらが言い訳する時間も作れるだろう。
そんな思惑である。
ぼくとうにゅ子が進む後ろには、スズハとユズリハさんの女騎士学園コンビ。
「──ユズリハさん、わたしエルフって伝説上の存在だと思ってました」
「遙か昔にはいたらしいが、この数百年間目撃情報が無いからな。それにエルフの遺跡もことごとく盗掘され尽くしたし」
「盗掘ですか?」
「そうだ。エルフはその昔、人などよりも圧倒的に高い魔力によって大陸を支配していた。それに魔導具も独自の高度な技術を持っていたからな。当然そんなものは人間には作れん。だからエルフの遺跡を見つけて、そこで上手くエルフ製の魔道具を見つけたなら、一国の領主になれたという話だぞ」
「そんなに儲かったんですか!?」
「さすがに国を買えるほど稼いだ連中はごく一握りだろうが、一生かけても使い切れない大金を得たとか、爵位を買って貴族になったなんて話はごまんと転がっているな」
「エ、エルフ、凄いです……!」
二人の話を聞くでもなく聞きながら、なるほどと感心する。
ぼくもエルフについてはスズハと同じような知識しかない。
さすがユズリハさんは公爵令嬢だと感心する。
「ところがな、スズハくん。この話にはもう一つおまけがある」
「え?」
「そうやって大儲けするとな、もっと大きなものを手に入れたくなる」
「……つまり、もっと良い魔道具ということでしょうか?」
「エルフそのものだよ」
「えっ──」
「エルフはみな魔法を巧みに操る種族だと言われるからな。エルフを一人捕まえられれば、魔道具なんていくらでも作らせられる。それにエルフは長命な種族で有名だから、きっと大陸のどこかに生きたエルフがいるに違いない。そう考えるのさ」
「そういうことですか……」
「それにエルフは凄まじく見目麗しい種族としても有名だから、鑑賞奴隷として欲しがる大貴族なんていくらでもいるわけだ。希少価値だってとんでもないし、闇オークションに出れば落札金額は間違いなく青天井だろう。良い悪いの話は別としてな」
「ですね……」
「そんなわけで、欲に目の眩んだ連中は稼いだ以上の金額を突っ込んでエルフを探すんだ。それに最初からエルフ捜索にターゲットを絞った、探検家なんて連中もいたようだがな。──しかしいずれにせよ、誰一人としてエルフを見つけることはなかった」
「ざまぁですね! ですがそうすると、この光の先には、盗掘されたエルフの遺跡がある可能性が高いですか?」
「わたしも普通ならそう思う。思うんだが……スズハくんの兄上だからなあ」
「兄さんですからね」
「そうなんだ。良くも悪くもそんな結果で済まない気がするというか、滅茶苦茶なことをやらかしそうというか……」
「仕方ありませんよ。兄さんですし」
いつの間にか、二人の会話がぼくの悪口になっていた。解せぬ。
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