第101話 「平原にいる百万の兵士をぼく一人でぶったたく」という非常にシンプルな作戦
キャランドゥー領からの宣戦布告を受けた夜、大広間にて第一回の作戦会議が開かれた。
「えっと。それじゃあカナデ、状況を」
「まーかせて」
メイドのカナデが、卓上に絨毯ほどの大きさのある地図を広げる。
カナデが身を乗り出して、豊満すぎるおっぱいをぐにぐに変形させながら地図上のある一点を指した。
「できるメイド情報によると、ここに百万の兵士が集結する」
「百万……!?」
「よくそんなに集めましたね。まあ、敵に回った兄さんがどれだけ恐ろしいか、最低限は理解しているということでしょうか?」
「とはいえただの兵士がどれだけ集まろうと、スズハくんの兄上に対抗するなどは絶対に不可能だがな。わたしやスズハくん、せめてアマゾネス族が百万人集まったならまだしもワンチャン勝てる見込みが……いや不可能か」
「いやいやいや!? そんなの勝てるわけありませんよねえ!」
「まあそんなことよりだ」
ぼくの当然すぎるツッコミは綺麗に無視された。つらい。
「つまり、この平野に兵士を集結させてから、山道をぞろぞろ連なって行軍するつもりか。なあスズハくん?」
「ですね。しかしそんなのを待っていてはキリがありません」
「なので兵士が平原に集結し終えたら、こちらから百万の兵士を叩くのが手っ取り早い。──カナデ、例のモノを」
「分かった」
メイドのカナデがいったん退出し、戻ってきたときにはもの凄い大きな剣を持っていた。
なにこれぼく知らない。
それにこの剣、なんというか……刀身が二十メートルはあるんだけど?
「キミがこれを持って、敵陣の中を振り回すんだ。そうすればどんな阿呆だって、キミと敵対することの意味が分かるだろうさ。どうだスズハくん、良さそうだろう?」
「兄さんならこの十倍、二百メートルの剣でも簡単に振り回せるのでは……?」
「それも考えたんだが取り回しが悪すぎる」
「なるほど。それなら納得です」
スズハが謎の納得をしているけど、それ以前にいつ作ったのさこんなの?
「ん、この剣か? スズハくんの兄上がこういう大剣を振り回したら、さぞカッコイイと思って、密かに作らせておいたんだ。わたしからの
「……アリガトウゴザイマス……」
多少引きつりながらもお礼を言うぼく。
今回の戦争ではともかく、その後は保管庫行き大決定の逸品である。
こんなものくれるくらいなら鮨の方がよっぽど嬉しいという本音は、上手く隠せたはず。
……でもこれ、剣自体の出来はすごくいいなあ。
カナデから渡された剣を、無駄に広い会議室の壁に当たらないようちょびっと振ったりしてみると、ユズリハさんがなぜか大変満足そうに腕を組みながら何度も頷いていた。
「うむっ……! わたしがプレゼントした大剣をニコニコ顔で試そうとしているキミの姿、とてもいい……!」
「……ソウデスネ……」
否定するとすごく悲しまれそうな気がしたので頷いておいた。
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結局のところ、作戦会議は「平原にいる百万の兵士をぼく一人でぶったたく」という非常にシンプルな作戦がぼく以外の満場一致で決定された。それでいいの?
その後、ぼくが城の中庭に出て大剣を試し振りする間に、スズハやユズリハさんたちは庭の片隅で細かい作戦を詰めてくれているようだ。
剣を確かめているぼくの耳に、風に乗ってスズハたちの会話が流れてくる。
「──ちょっと待つんだ! なんでわたしが、わたしの唯一の相棒の、唯一無二の背中を護れないというのだ!?」
「当然でしょう。ユズリハさんみたいな有名人が兄さんのそばにいたなら、何があってもユズリハさんの手柄になって兄さんを大々的にアピールする作戦が台無しじゃないですか。あとしれっと兄さんの相棒を自称するのはいかがなものかと」
「で、では仮面舞踏会みたく目元を隠せばセーフではないか!?」
「超アウトです。もし兄さんが謎の悪魔に取り憑かれてるとか噂になったら、どうやって責任取るつもりですか」
「責任ならば、いつでも取る覚悟はある!」
「却下です。よこしまなオーラがぷんぷんします」
「ううっ……否定できない……!」
「というわけで兄さんは、妹にして知名度ゼロのわたしがしっかり護ってみせますので。ユズリハさんは城で留守番でもしててください」
「それはあまりにずっこくないか!?」
何を話しているかまでは分からないけど、スズハがユズリハと仲が良さそうで兄としてとても嬉しい。
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本日、3巻の発売日でございます!
これも応援していただいた皆様のおかげでございます、本当にありがとうございます!
3巻の内容は、主人公と白髪吸血鬼との決着がついたりとか、あといつものヤツです!
3巻の店舗特典は、とらのあな様とメロンブックス様でつくのと、
あと3巻自体には特典つかないのですが、ゲーマーズ様でドラゴンマガジンを買うと女騎士学園のSSがおまけでつくみたいです!
売れ行きがいいと4巻が出ますので、もしよろしければぜひぜひ!
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