10章 反乱と殲滅、そして凱旋パレード

第99話 宣戦布告

大変ご無沙汰しております。


★簡易キャラ表★

スズハの兄:最近は絶滅危惧種の難聴系主人公。実は全部聞こえてる(大ウソ)

スズハ:元気系丁寧口調爆乳青髪ポニーテール妹っていいよね。

ユズリハ:金髪爆乳女騎士にして公爵令嬢。つまり属性もりもり。

トーコ:黒髪ボブの爆乳女王様。最近ムチとロウソクを買った(大ウソ)

カナデ:褐色銀髪ロリ爆乳ツインテールメイド。

アヤノ:メインヒロイン昇格を狙うも、ヒロイン全員巨乳時空のため失敗続き(大ウソ)

うにゅ子:ラノベにいがちな謎の幼女。ええっ、吸血鬼がいなくなった後に特徴そっくりの幼女が現れたって!?(すっとぼけ)


────────────────────────────── 

 停戦協定の調印式が終わって、各国からの賓客もそれぞれの国へと戻り。

 最後にウエンタス公国のご一行が帰ってしばらくした後、アヤノさんが戻ってきた。

 つまりは日常に戻ったということだ。


「それでトーコさんは、いつ頃までローエングリン辺境伯領に?」

「さすがに戻らなくちゃマズいかなー。これ以上いたらサクラギ公爵に怒られちゃうし、オリハルコンとか彷徨える白髪吸血鬼の調査だって、一度戻ってから本腰入れて指示出ししないとねえ?」

「なるほどですね。ユズリハさんは?」

「んっ? いいやキミ、わたしのことは気にしなくていい。キミの側にいて大丈夫だと、父上からもお墨付きを貰っている」

「それはありがたいですけど……?」


 ユズリハさんだって、王国の重鎮たる公爵家の次期当主のはずなんだけどな。

 そりゃぼくが口を挟むことじゃないけどさ。

 ぼくが首をかしげていると、スズハがニコニコしながら口を開いて、


「兄さんとの鍛錬も、いつも通りに戻せそうですね!」

「そうだね。調印式までも終わったし、アヤノさんも戻ってきてくれたから、ちょっとは余裕ができそうだね」

「やりました!」


 スズハが大げさにガッツポーズしていると、メイドのカナデがすすすと寄ってきて。


「……カナデも訓練に参加したい」

「えっ?」

「カナデ、頑張っていっぱいした。だからご褒美がほしい」

「そうだね。仕事を頑張ってくれたご褒美をあげなくっちゃ──でもカナデはそんなのでいいの? もっとこう、お金とか休暇とか──」

「むしろどんとこい」

「カナデがいいならぼくもいいけど」

「やたっ……!」


 ぼくとの訓練がなんでそこまで嬉しいのかはともかく、年少組の二人が喜んでいるのを微笑ましい感じで眺めていると。

 背中を突かれて振り返るとそこには、おねだり顔のユズリハさんが。


「……なんでしょうか?」

「あー。わたしはキミの相棒であるからして、なにかキミに協力したからといって対価を要求するような品のない女ではない。ないのだが──!」

「ないのだが?」

「ないのだがしかし──! そこはホラ! 魚心あれば水心というではないか──!」

「魚が食べたいんですか? じゃあ今日はお刺身にしましょうか」

「わあぃ」


 それでいいのか公爵令嬢。

 とはいえ、こちとら名ばかり辺境伯なので、バリバリの公爵令嬢であるユズリハさんをどうやって満足させればいいのかよく分からない。

 とはいえ滅茶苦茶お世話になってるのも事実なので、王都へ帰るときにはお土産として山ほどミスリルやオリハルコンを持たせてあげたいと思う。


「ねえねえスズハ兄。ボクはー?」

「トーコさん?」

「スズハ兄にたくさんお土産もらったけど、ボクのカバンはまだ若干の余裕があるよ? ……あと欲を言うなら、王家とか女王に対するものじゃなくてさ、スズハ兄からボク個人へのお土産が欲しいかなーって──」

「ちょっと待った。トーコは今回、ただ王女としての仕事をこなしていただけじゃないか。なぜスズハくんの兄上から追加報酬を得ようとしているのだ?」

「そんなことないよ! ボクだって頑張ったもん!」

「そうなのか?」

「そうだよ! 具体的には、ウエンタス公国に返した捕虜を使い物にならなくしたり!」

「えっ……そうなんですか?」


 それは──どうなんだろうか?


「うーん……?」


 考え込んだぼくに気づいて、ユズリハさんが聞いてきた。


「どうしたキミ?」

「いえ。もし捕虜が使い物にならなくなった、というのが事実だとすると──また戦争が起きかねないかもって」

「なに? どういうことだ?」

「ボクも聞きたい」

「わたしも興味がありますね、閣下」


 ユズリハさんとトーコさんに、アヤノさんまで興味を示してきたので説明する。


 ──要するに、問題は辺境伯領で発覚した、ミスリル鉱山の横流しなのだ。

 あれは確認こそ出来なかったものの、どこかの国の兵士が横流しに絡んでいた。

 一番あり得そうなのは、国境を挟んだウエンタス公国で。


「ミスリル鉱山は横流しが発覚したので、今後はもう不可能です。その上で、休戦協定でかなりの負担がかかったとしたら……」

「ミスリル鉱山を奪い取ろうと再度戦争を仕掛けてくる──か?」

「ええ。捕虜の司令官が使い物にならなければ、ジリ貧が急加速します。指揮官の育成は本当に時間も金もかかりますからね」

「ねえスズハ兄。ひょっとして、ウエンタス公国全体が横流しに絡んでいる?」

「それは無いでしょう。もしそうなら、休戦協定をそのまま呑まないでしょうから」

「ふむ……」


 ユズリハさんたちが考え込んでいる。

 まあそういう可能性もある、という程度の話なんだけどね。それに。


「とはいえ、ウエンタス公国のアヤノ大公は優秀らしいので、大丈夫でしょうが」


 ぼくの言葉に、トーコさんが難しい顔でかぶりを振った。


「いーや。アヤノ大公は自分が優秀な分、クルクルパーの考えることは分からないタイプだね」

「えっ」


 なぜかアヤノさんがショックを受けた顔をしている。なんだろう。

 ユズリハさんが腕組みをして、


「結局キミの仮説はウエンタス公国にミスリル鉱山の横流しで大儲けしていた領主がいて、そいつの金銭供給元が絶たれヤケになった結果ローエングリン辺境伯領をイチかバチかで攻撃する、ということだろう?」

「ええ」

「愚かすぎる選択肢だが、可能性としては十分にあり得る話だろうな。とはいえ、キミの言うとおりあくまで仮説だ。今こちらでどうこうできる話ではないと思う」

「ですね」

「正直、キミもわたしもいる以上、こちらは攻められたって別に困らないからな。なので様子見するしかないだろう」

「頼りにしてます、ユズリハさん」

「ああ、任せておけ」


 ****


 そんな話をして、トーコさんも王都に帰った一ヶ月後。


 ぼくたちの領地に隣接する、ウエンタス公国のキャランドゥー領が反乱を起こして。

 ローエングリン辺境伯領に対して、宣戦布告をしてきた。


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皆様のおかげで、5月19日(金)に第3巻がでます。

本当にありがとうございます!

(ちなみにweb版は、ここからが2巻最終章に該当します)

売上がよければ第4巻が出せますので、もしよろしければ、是非是非よろしくお願いいたします!

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