9章 調印式
第85話 でもおっぱいはカナデの勝ち
大変ご無沙汰しております。
やんごとなき事情により更新遅くなりまして恐縮です。
★前回までのあらすじ★
不正取引が行われるというミスリル鉱山に踏み込む主人公一行。
するとそこにはなんと、宿敵である『彷徨える白髪吸血鬼』が!
主人公、死闘の末なんとか撃破!
白髪吸血鬼は大爆発して行方不明、なぜか代わりに見知らぬ幼女とオリハルコンが残される!
どさくさに紛れてキスしようとしてたヒロイン二人は邪魔が入って涙目だ!
★簡易キャラ表★
スズハの兄:主人公。口癖は「ぼくまた何かやっちゃいましたか?」(大ウソ)
スズハ:青髪ポニテの丁寧口調妹。乳がでかい。
ユズリハ:勝手に主人公の相棒を自称するやべー公爵令嬢。乳がでかい。
トーコ:ヒロイン枠レース常に第三位の女王。乳がでかい。
カナデ:褐色銀髪ロリ爆乳ツインテールメイド。
アヤノ:スズハの兄の領土の事務長的存在。実は女性との噂も(いみしん)
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ミスリル鉱山から帰ったぼくを待ち構えていたもの。
それは執務室で書類に埋もれるアヤノさんの、恨みがましいジト目だった。
「す、すごい状況だね……? えっとこれ、お土産のオリハルコン」
「……このオリハルコン鉱石、やたら出来の良いニセモノですね。どこのお土産屋さんで買ったんですか?」
「本物のオリハルコンみたいだよ? ユズリハさんがそう言ってたし」
「そんなことあるわけないでしょう。このサイズのオリハルコン鉱石がもし本物だったら、大陸中の国家が大騒ぎですよ」
「ニセモノじゃないと思うけどなあ……?」
なにしろ、鉱脈が露出しているところから拾ってきたのだ。
あの後のユズリハさんの慌てようとか、ちょっと厳重すぎるくらいの箝口令とか見れば、ぼくにもオリハルコンがミスリルよりも希少な金属なのだろうと想像はつく。
それがどんな物なのか、具体的には分からないけれど。
「あともう一つ」
「なに?」
「閣下の頭上に乗っている白髪の幼女は、閣下の隠し子でしょうか?」
「そんなわけないよね!?」
なぜみんな、ぼくに隠し子がいると疑ってかかるのだろうか。
得心がゆかぬわ。
「この子はね……よく分からないんだよ」
「どういうことです?」
アヤノさんに説明する。
ぼくたちが彷徨える白髪吸血鬼と死闘を繰り広げた結果、光の大爆発が起きたその後、彷徨える白髪吸血鬼がいなくなった代わりにこの幼女が現れたこと。
髪の白さや
ぼくが話を続けると、
「閣下? つまりこの幼女は、彷徨える白髪吸血鬼と何らかの関わりがあると……?」
「そこは断定できないけどさ。いずれにせよ、ミスリル鉱山の中に放っておく訳にいかないでしょ? だから連れて帰ってきたんだよ」
「……はあ。閣下は神経が図太いというか、大胆すぎて呆れるというか……」
「酷い言われようだ!?」
ぼくだってアヤノさんの言いたいことくらい分かる。
きっと、彷徨える白髪吸血鬼と少しでも関係がありそうなものなら、殺してしまうのが正解なのだろう。少なくとも統治者の理屈としては。
けれどぼくには、どうしてもそれが出来なかった。
もしもどちらを取るかと言われれば、ぼくは辺境伯であることを捨て、この子を連れてスズハとどこかの森の奥で暮らすだろう。
だってこの子が何をしたわけじゃない。それが庶民の心意気だ。
この子が彷徨える白髪吸血鬼に関係していると確定したならまだしも──
「それで、その子はなんという名前なんです?」
「うにゅ子」
「……はい?」
「この子、なにを聞いても『うにゅー』としか言わないんだよね。だからうにゅ子」
「うにゅー」
「……閣下のネーミングセンスが皆無であることは、よく分かりました」
ずいぶんな言われようだった。
その後、ひとまず様子を見るためメイド見習いにすべきだというアヤノさんに同意して、うにゅ子は幼女メイドになることになった。
本人に「それでいい?」と聞いたら首を縦に振りながら「うにゅー」と言っていたので恐らく大丈夫だろう。
「それじゃ、うにゅ子の先輩メイドさんを呼ぶよ。カ──」
「お呼びとあらば即参上」
ぼくが呼び終わらないうちに、我が家の優秀なメイドさんであるカナデが現れた。
いったいどうやってるのかまるで不明だ。
そしてカナデは、後輩となるうにゅ子の顔をじーっと見つめて……
「……かぶってる。キャラが」
「うにゅ?」
いや、銀髪少女と白髪幼女だからそこまで被ってないとは思うけど。
すると今度はカナデが、うにゅ子を胸元で抱きしめて。
「でもおっぱいはカナデの勝ち」
「うにゅー!?」
「なに張り合ってるのさ!?」
幼い体型に不釣り合いなカナデの豊満すぎる胸元でハグされた結果、鼻と口が塞がれて窒息したうにゅ子がじたばた暴れる。
一見じゃれ合っている風だけど、本気で息ができないのだろう。
「こらカナデ。離しなさい」
「う、うにゅ……」
「格付けは済んだ」
カナデからうにゅ子を引き剥がすと、ちょっぴり涙目のうにゅ子と対照的に、カナデはなぜかドヤ顔だった。
幼女相手に胸の大きさでマウントを取るとか、大人っぽいんだか子供っぽいんだかよく分からないけれど。
「これからはカナデが、メイド長としてビシビシ鍛える」
「うにゅ」
「メイドの道は一日してならず」
「うにゅー!」
仲良くやれそうなので、これでいいかなと思った。
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皆様のおかげで、本日1月20日(金)、第2巻を発売することができました。
また第1巻も重版、再重版と版を重ねることができました。
本当にありがとうございます!
そして、第2巻の売れ行きが良ければ、第3巻も出すことができるっぽいです。
あとコミカライズ企画も進行中みたいです。
なのでよろしければ第2巻も、ぜひよろしくお願いいたします!(._.)
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