第32話 アマゾネス軍の総軍団長
ようやく着いたオーガの大樹海の防衛拠点は、大きな砦のような建物だった。
そこにいたのは隣国のアマゾネス軍団がおよそ1000人。
この砦にはオーガの繁殖期に、両国がそれぞれ10万人の兵力を出す約束になっているらしいのだけれど、たった1000人でも問題ないのだという。
なぜならアマゾネスは、たった一人で兵士100人分の働きをするのだから。
ホントかなあ?
「──そっちが、たった三人だとは思ってなかった」
無表情の中に僅かな不快と不信を滲ませているのは、アマゾネス軍の総軍団長の二人。
どこから見ても同じにしか見えない双子で、名前はカノンさんとシオンさん。年齢は良く分からないけど、ぼくたちよりも僅かに上だろうか?
その格好はどこから見てもアマゾネス。
ビキニアーマーに身を包み、鍛え抜かれた褐色の肉体を惜しげもなく晒している。
顔立ちはいわゆる東方系、彫りが浅めなのでぱっと見は地味だけどよく見ると凄まじい美少女である。
ビキニアーマーで丸見えな体つきも、まあとんでもなくエッチで。
アマゾネスさんたちはみんなボンキュッボンなスタイルだけど、そのトップである二人はサキュバスも裸足で逃げ出すほどの発育ぶりだった。
とはいえ、こっちのスズハやユズリハさんも似たようなものだけど。
「そちらの不快はもっともだ。だがこちらの話を聞いてくれ」
気の弱い男なら目の前に立たれただけでチビってしまいそうなド迫力美人双子に睨まれて、それでも平然と主張をするユズリハさんがとても頼もしい。さすが貴族。
「現在、我が国の軍事情は非常に厳しい。というのも──」
ユズリハさんがどんな言い訳をするのかは、事前に聞かされていた。
その内容はかろうじてウソではないものの、控えめに言っても大げさで紛らわしい、誤解を招きかねないようなもので。
つまりは儀礼的、外交的な会話というやつだ。
もちろん相手もバカではないのでそんなことは分かっていて、要は「わたしもたった三人とか頭おかしいと思うんだけど、上層部がクソなので仕方ないのだよ。ごめんね☆」ってことを、丁寧すぎるオブラートで何重もくるんだ会話なのだ……ってユズリハさんが言ってた。
ユズリハさん渾身の言い訳が終わると、アマゾネス総軍団長の片方が軽く頷いて、
「……そっちの言いたいことは分かった」
「そ、そうか。良かった──」
「でもそんなことはどうでもいい。それより」
これもまたユズリハさんから聞いていた。
アマゾネスは、貴族階級的な儀礼は重視しない傾向がある。
だから直球で、いろいろ言われるかもしれないということ。
「──問題は、そっちの男」
「スズハくんの兄上のことか? だが今も言ったように、彼は男かもしれないが、わたしたちの──」
「いい。言葉じゃどうせ分からない」
アマゾネスの双子がビシリと揃ってぼくを指さして、交互に語りかけてきた。
「ユズリハはお前がとても、とても強いと言った」
「けれどそんなことは到底信じられない」
「だからわたしたちは、お前に勝負を挑む」
「それに勝つことができれば、わたしたちもお前を認めよう──」
「「どう?」」
ド迫力美人にじっと見つめられ、どうかと聞かれてしまったら。
ぼくみたいなただの平民にできる返事は、一つしかないじゃないか。
「は、はいっ……!」
「よく言った、男」
「ではこれから
「決着はどちらかが降参、または死ぬまで。異論はない?」
「あ、ありません」
なんだか試合の言い方がやたら物騒だったけれど気のせいだろう。
それにこの状況は、男のぼくが最低限の実力があることを、アマゾネスみんなに披露する機会を作ってくれてるとも言えるわけで。
そう思えば二人は、ぼくにもちゃんと配慮してくれてるのだと思う。
言い方はちょっとアレだけど。
共同戦線を張る前に手合わせすることだって、むしろ当然のことだしね。
「スズハくんの兄上なら大丈夫だと思うが、くれぐれも気をつけてな!」
「に、兄さんっ! どうかご無事で!」
なぜか大げさな感じで見送る二人に内心で首をかしげる。
やだなあ。
ただの模擬試合じゃないか。
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