25.魔法少女の絶滅

 魔法少女は絶滅した。いつからか誰もがその名を口にすることもなくなった。困っている人がいれば駆けつけ、いじめられている子がいればいじめっ子たちを成敗し、地球を支配しようと攻め入って来た異星人たちを撃退する。そんな少女たちは今やこの世界に存在しない。

 伝説として語られるでもなく、憧れの存在として崇められるでもなく、ただただ悪く言われるのみ。少女らは空を音速で飛び、人々を助けて回っていたというのに、何故こうなったのか。それは簡単。救われる者と救われない者があったからだ。

 例えば土砂崩れに巻き込まれた人を助けたとする。それはニュースにも取り上げられ、褒め称えられた。しかし手遅れになることだってある。あの人は助かったのに、どうして私の息子は死んだの。どこかの誰か、飲み込まれて死んだ者の親が泣きわめいた。

 魔法少女にだったら何でもできる、全てに救済を与えられる、何事も解決してくれる。そう勘違いするには充分な功績だった。新たな宗教を作り出すには不足なかったのだ。その少女らは魔法を使えるというだけで、神ではない。少し不思議な力を授かってしまっただけの、不運な少女なのだ。不可能なことだってある。

 だからこそ、絶滅を防ぐことができなかったのだ。

 魔法少女狩りが始まってすぐ、少女たちは降伏した。白旗をあげながらただの人間たちに歩み寄った。それなのに人間は、それを利用して魔法少女を滅ぼした。条約を結ぼうと手を伸ばし、握った瞬間、全てを裏返した。

 少女たちの首は次々と鎌で落とされていった。蘇ってはならぬと身体を小さく切り刻んだ。そうして燃やして灰にしてから、海の主の餌として撒いてやった。人間は魔法少女に勝ったのだ、と毎日のように宴を開いたらしい。

 ――その後、数日もしないうちにその地域は津波に飲まれ、消えたのだが。


お題「ステッキ」

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