21.運試し
最近、不自然に人が減っている。何故かは知らないが、その全てが例のあの店に行くと言ってから姿が見えなくなっているらしい。真実が気にならないでもないが、そんな噂のついた店に行くなんて決心はできずにいた。
仕事を終え、ふらふらと帰宅していたときそんなことを思い出して、私は無意識に路地裏へ足を運んでしまった。そこは教科書通りの路地裏といった印象で、奥に進めばインチキくさい占い師でも現れそうなものだった。予想と違ったのは、それが占い師でなく、缶を売る怪しいフードの人だったことだ。
「何が当たるかは運次第。あなたの運を試してみませんか?」
フードの影から覗く青い瞳が私を捉える。引き寄せられる不思議な光だった。
「頂点にのぼれる大当たりから、どん底に落ちる大ハズレまで。もしかしたら、死、すらも引くかもしれません」
それでも良いですか、フードはそう言う。何故だか、私はもう逃げられないのだと悟った。
おずおずと手を伸ばし、気になった缶を指さす。するとフードは目を細め、喜んでそれ開けた。
「勝ちか負けか、どっちが出るか」
中にあったのは真っ暗闇で――。
「ふふ、大ハズレ」
お題「缶詰」
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