18.帰って来ない

 お腹が減った。彼が何か食べられるものをとってくると言って数日経ったが、まだ帰って来ない。いくら遠い所へ行ったって、どれだけ難しい食材を目指していると言ったって、これは遅すぎる。心配だ。

 キャンプから少し出た先で、今日も彼を待つ。きっと今日は、今日こそは帰ってくるだろうから。背後からキャンプのみんなの声が聞こえてくるけど、そんなものは構わない。

 かわいそうに。このまま追い出そう。仕方ないよね。あの記憶がないのか。まだあの子は。誰か教えてあげて。縛り付けるべきじゃないか。どうか助けてあげて。

 その言葉たちの意味自体はわかるけれど、どういう理由で使われているのかはわからない。たぶん、私に向けられたものなのだろうけれど、どうしてそんなこと言うのか理解できない。

 彼はきっと、数週間前に私が美味しいと叫びながら食べていたアレを持って帰ってくるのだ。キャンプの人たちが信じなくとも、私が信じる。彼はすぐに帰ってくる。もう少し、あと少しで、私の胸に飛び込んでくる。

 ――けれどあの日食べたアレは、何の肉だったのだろう?



お題「旬」

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