17.星に願う
隣にいる彼女は、星を掴もうと腕を伸ばしている。こちらに落ちてくる訳なんてないと知っていながら、手に入れたいと思ってしまうのはどの人間も同じことなのだろう。
「ねえ~、どうして星はこっちに来ないかな?」
「当たり前でしょ。どれだけ遠くにあると思ってるの」
言いながら辛くなるのは、私も届かないものを欲しているひとりだから。
「あんなにたくさんあるのに。ひとつくらいくれても良くない?」
「そういう問題じゃない」
むっとした彼女はこちらを向いて、私の顔を両手で挟んだ。
「いっつも冷たい! こういうときくらい、もうちょっと優しくしてよね」
そんなこと言われたって、優しくはできない。冷たくしていないと、おかしくなってしまいそうだから。
私は頬を包むその両手を掴み、おろす。
「私があんたに優しくしたら、私じゃなくなるでしょ」
「うーん……そう、なのかなぁ」
本当は彼女を引き寄せ、強く抱き締めて離したくない。ずっとこのままこの時間が続けば良いと思っている。その紅く濡れている唇にキスをしたい。だけどできない。この「親友」という、居心地悪くない場所に止まっていたいと思ってしまう。
「でもね、あたし、そういうとこ好きだよ」
彼女は視線を戻しながらそう言う。でもそれは、私の星じゃない。願うのは一等星。くれたのは、せいぜい宇宙服あたり。それをもらって可能性を見つけて、それで終わり。きっと私は、このまま宙に漂うことしかできないのだろう。
お題「流星群」
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