7.潮時
「もう無理だ、引き上げよう」
隊長は「うみ」の向こうを眺めながらそう言った。私もそろそろ潮時だと思っていたし、これは仕方のないことと理解している。
初めは十数人いたはずのこの隊が、遂に隊長と私だけになってしまったのだ。引き返す他ない。とは言え、元のキャンプに戻れるかすらわからない。「もり」やら「さばく」といった、初めての地形に惑わされた私たちは、当初予定していた目的地とは全く別の場所に出てしまったのだ。
ただ、何人もの犠牲を出してでも「うみ」という、塩辛い水の集合体を発見できたのは大きな収穫と言える。それに、夕日が沈むのも相まって、美しい景色を作り出していた。これを見られただけでも十分な価値がある。
「もう……戻ろう」
隊長は一筋の涙を流しながら、目を瞑って手を合わせた。失ったものたちへの弔いだろう。私も並んで手を合わせる。彼らのためにも再び旅に出なくてはならない、そんなことは今は忘れてしまおう。ただ、この景色に飲まれてしまいたかった。
お題「引き潮」
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