4.拝啓
陽の光があたたかい秋がすぎて、冬が顔をのぞかせはじめました。きっとこの手紙をひろってくださったあなたは、おだやかにおすごしのことと存じます。
さて……はじめてこんな手紙を書くので、あまり勝手がわかりません。ここからはぼくの思うままに心を書きなぐります。もし無礼な部分を見つけてもみのがしていただけると、幸いです。
ぼくは今、すてきな景色を見ることができる山頂にいます。世界はぼくが思っているよりも大きく、美しいのだと知りました。ぼくは今、はじめてこんなにも自由です。だけど、これはぼくの最初で最後の自由です。
ぼくの世界は家と学校だけでした。それ以外はぼくの外側の話で、あまり聞かせてもらえないし、体験もさせてもらえませんでした。
家の中といっても、ぼくの居場所は物置小屋でした。ごはんは両親が食べているのとは全く違っていて、ぼくのはたぶん、生ゴミのようなものだったと思います。お風呂にはほとんど入らせてもらえなくて、服もボロボロのものしか与えられませんでした。だからこんなぼくが学校でも居場所がないのは当たり前でした。だって……。いえ、この話はやめましょう。
ぼくはこれから本当の自由を手に入れます。けれど、どうしてもぼくのことをだれかに知ってほしかった。こんな苦しい人生をぼくひとりがかかえてもえていくのは、どうしてもたえられなかったのです。だからこの手紙をとばしました。
もしも、いないとは思うし、いないでほしいですが、ぼくのような子どもを見つけたら、どうか助けてあげてください。おねがいします。
この手紙がだれかの手に届きますように。ねがいをこめて、ぼくといっしょにとばします。さようなら。
敬具
お題「紙飛行機」
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