2.遊園地の守人

 ざらついたアナウンスが流れる。途切れ途切れの楽しそうな音楽が後ろを過ぎって、ギイギイと嫌な音を立てながらパンダの乗り物が勝手に動いている。

 誰もいない、忘れられた遊園地――。

 脆い金網で囲われてはいるが、至る所に穴があいているしとてつもなく脆い。思い切り蹴ってやれば外れるだろう。しかしその先は何もない。うっかり体当たりでもしてしまえば真っ逆さまに落ちるのみだ。

 こんな場所に私だけ。ずっとずっと昔から、たった一人でこの場所を守っている。と言っても、もう世界にはほとんど人間がいない。私の知る限りでは……一人もいなかったのではないだろうか。だからここを壊そうとする者だって一人もいないのだ。

「らんらーんらら、らんらーんらら」

 スピーカーから流れるのに合わせて、一緒に歌う。よく知らないが、この歌は「テーマソング」というやつらしい。

 手のひらを見つめて、開いたり閉じたりを繰り返してみる。動かしにくくなっているのを感じる。最新型のアンドロイドと言えど、最後にメンテナンスしてもらったのはいつだったろうか。指を折って数えられる範囲内でないことは思い出せる。だけど……あの係は人間だったから、もう死んでしまったのだろうか。

 錆び付いた空を見上げて、歌い続ける。きっと動けなくなるその日までずっと、この場所を守り続けるのだ。


お題「屋上」

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