24.憎しみをぶつける

 レオナは相手を睨みながら聞き返す。

「忠告?」

「お前がこれから消そうとしているのは親父の仲間だぜ。大切な親の関係者」


 レオナはこれ以上ないほどに、目を見開いて敵を威嚇した。

「誰が大切なものか! 私の家族はレオ兄一人」

 そういうと奴は憂いを帯びた目をした。

「そうか」

(この眼はなんだか、どこかで見たことのあるような)

 彼女はその視線を受け止め、その思考は形になる前に霧散する。

「ほんと、レオそっくりだよな」

「お前がレオ兄の何を知っている!」

 レオナは兄の名を呼ばれることが不快でたまらなかった。

「……なにも。じゃな。嬉しかったぜ」

 彼はレオナの拘束を解いた。レオナが攻撃するよりも早く、彼は窓を開けた。冷たい風が室内に流れ込む。

「お前が憎しみを知ってくれたからな」

 奴は二階の窓から飛び降り、姿を消した。

「何なのよ!何を言われたって私のやれることをするまでよ」

 暗殺の仕事は明日、実行するのだ。

 ✝ ✝ ✝


 レオナは仕掛けを終えて立ち去るところだった。

「では、ごきげんよう」

「ところでお嬢さん。マックという男を知っていますかな?」

 屋敷の主はそう言ってきた。

(毒を盛ったことなど分かるわけがない。少しだけなら話してみてもいいか)

 些細な情報でも見逃さなさないというのがカナからの教えだ。

「いいえ、存じ上げませんわ。どのような人物なのですか?」

 男は昔を思い出すように語った。

「失礼。マック・リファードという学者ですよ。優しくて常識があって、威厳ある学者でね。彼の主張は興味深いものだったよ。あなたの目がどうしてもある男と重なってしまって」

 優しそうな主の目には涙の幕が張っていた。

「大切な方の様ですわね。その方は、もう?」

「ああ。学者の癖に、危険な商売ばかりしていたからね。体を壊してしまって病で亡くなったよ」

 以前のレオナだったなら、同情したかもしれない。


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