23.慣れてきた仕事
✝ ✝ ✝
レオナは、ある準備をしていた。
「これで準備は完璧ね。あとは訪れるだけ!」
彼女は必死に自分が認められるための行動していた。標的がいる町まで移動して宿をとり、怪しまれないようにと潜伏している。二階建ての小さな宿だ。外観は古く、汚いが、設備は整っている。
急いで旅をしていると荷物の中がクシャクシャになってしまうこともある。
彼女はベッドの上に荷物を広げて整理をしていたのだ。
「カナ姐に怒られちゃうな。あんなに整理整頓しろっていわれたのに」
カナのおかげでレオナの専門は毒になった。自分の持っている毒薬はすでに耐性がついているから問題はない。
暗殺の道具についてカナに頼っている部分も大きい。たとえば、価値が高くて出回り難いものだってカナが揃えてくれる。貴族の目にとまるような品選びもカナ任せだ。
商品の質の区別が判然としないのだ。安物と逸品を触ってもどちらがどう価値があるのかわからない。仕方がないからカナによい品を頼んでしまうのだ。
自分で選べないから、カナから貰った物は効率よく使っていかないと申し訳ないと思っている。
「よう。ノルマまで、あと少しなんだってな」
耳元でふと男の声が響いた。
「何者だ!」
「俺だ。ジョンだよ」
兄を殺して、言うに事欠いてレオナを弟子にしたいと言った男。思案する前に体が動いた。彼女の目は暗くよどみ、鋭くなる。苦しんだ時間が長ければ長いだけ、彼女の自信となる。カナ以上に強いと評される男でもひるむことはない。狙うは心臓。
ブンッッ
「おっと、危ないな」
毒を塗ってあるナイフを投げたのに腰にさしてある柄で弾かれた。細工した刃物は床に刺さってしまった。
「ナイフと来たか。暗殺するならもっと凝ったの使ったらどうだ? しかも毒まで仕込むとは趣味が悪いな」
彼は一向に怯む様子なく部屋中を観察している。
「ま、初心者にしては上出来な部屋の使い方。持ち物の使い方がもったいないが、性格でもあるから仕方ないかな」
「何時でも動けるようにしているし痕跡を残していない。カナが仕込んだだけあるようだな」
「ふざけないで! 今に殺すっ!」
「落ちつけよ。そんなに騒ぐと周りに聞こえるぞ? 危なくて仕方ないから、拘束だな」
奴がユラリと動いたことは認識できた。
遅く、緩慢な動きだから避けられると思った。なのに――
「甘いな。気性だから仕方ないかもしれないが、動きが直線すぎだ」
実にあっさりと手首を掴まれた。相手は片手だけしか使っていないのにレオナは身動きがとれない。
「なによ! レオ兄の敵!」
もがいてみるが、びくともしない。身体の距離は近いのに、技術的には遥かに及ばない。本能的に察してしまっても、今はレオナには立ち向かうしか選択肢はない。
「ああ。それに関しては何も言わないぜ。だがな、忠告しに来たんだ」
理解するのに時間がかかった。拙い点はいくらでもあるだろうが、殺気はそうとう感じるはずだ。
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