42.一大事件
✝ ✝ ✝
この一件は新聞に一面報じられるほど大きな事件となった。
無論下級地区の人間にも情報は伝わっていた。
ばさりと新聞がとじられた。
「カナが捕まったのか。馬鹿な小娘だな」
長老は葉巻をくわえ改めて新聞を見下す。
「お前は賢いからな。こちらも万全の態勢で臨まねば。
均衡が崩れてしまうのは何よりまずい」
「ええそうですわね。それよりあと一人協力者がいるのでしょう」
「ああ。まだこないようだ」
✝ ✝ ✝
古典的ではあるのだが、両手を縄で括られてしまう
「だからリマ地区からの命令だったって言ってんの。早く面会させなさいよ」
「お前ごときがモノ申すなどあり得んのだ」
そう言って一枚の紙を取り出した。
「それは」
「これは最高地区からの通達。これがあればお前を処刑出来るのだ。
嬉しいだろう。地区の裏切り者にはこれくらい残酷な最期がないとな」
カナはフッと馬鹿にした笑いを洩らした。
「バカはあんたよ。
この世の成り立ちすらしらない奴が知った口を利かないほうがいいわよ」
「何だと? 正気でなくなった女の言うことは信用できない」
「あんたの名は?」
「この際だ。教えてやるよ。バラン・アフリケットだ」
カナは記憶していた羊皮紙の内容と照らし合わせる。
「アフリケット家なら殺された一族ね。
こんなところで仕事して恥ずかしくないの?」
「なにをだ?」
カナの計画どうりに反乱分子はそこかしこに存在する。
有名な犯罪者は下っ端役人を洗脳することから始めた。
一日では到底効果がない。
けれど一週間あれば説得することは可能だとカナは考えていた。
成果が出るのを楽しみにその夜は眠りについた。
✝ ✝ ✝
不満を持つ者は押し殺しているだけでいないわけではけしてなのだ。
「さて、カナねえのことを新聞に書いてよね」
新聞社に二人はいた。
中級地区でも治安の悪い場所に位置するRRR新聞社だった。
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