41.カナたちの策略

 ✝ ✝ ✝


 読み終えたカナははっきり言う。

「これは……使うしかないわね。起死回生のチャンスよ」


 めまいがするほどに具体的な歴史背景が描かれる。

 きっと父親はこのことに関してかなりの知識を有していたのだろう。


 机の上の書類をざっと見ても血塗られた家系図に関する項目は見られない。


 地区別の人口についての資料が多いようだ。

 それに対して棚に収納されている本は

 祖先、遺伝子、伝承といったタイトルのものばかりだ。


 ジョンは一番近いと思われる本を手にとってパラパラと繰ったが

 すぐに閉じてしまった。


「これだけじゃあ、実現には弱いな。立証できる物がないと」

「じゃあまずは書斎の整理からだね。

 こんなに紙が散乱してたんじゃ、

 肝心の物がどこにあるのか分かったもんじゃないよ」


「そうね。これだけあると判断がつかないわ」

 イス、窓の近くに置かれていたソファーの上の書類を合わせると

 指4本分にもなった。


 ソファーをどけると裏に隠し扉が存在した。

「ってわかりやすい構造しているわね」

 

 ギイとあけると丁寧に収納された2枚の羊皮紙が目に付いた。

 上質なそれには家系図が記されていた。

「これが地区が分かれた秘密」


「たしかに殺されたものがいる。本当なようだな。後はこれを有効に使うだけだが」

「だったらこんなのはどう? 準備が出来たら私は捕まるわ。

 これなら裁判にはカケられるわ」


「それでは取り合わない可能性のほうか大きいよ」

「違うわ。家系図ではなくて、リマ地区のしたことを訴えるの」


「幹部も関わったくせに下っ端だけ処罰させて、嵐が通り過ぎるのを待つのかって」

「いい考えだ。それなら今の話だしな。実感がわく」

「最高地区にはどうして家計を隠すのか聞いてみたいわね」


 計画はこうだ。

 カナが人通りの多い中級地区で捕まる。

 捕まり指示したのはリマ地区長老だと告げる。そして言うのだ。


「これだけ下の者が揉めているのになぜあなた達は仲が良く、

 何もしてくれないのか」と

 それでも甘いと話をつめていくうちに三人が納得する計画ができた。

 薄暗い部屋の中で三人はにこりと笑い会った。


 ✝ ✝ ✝


「さて。計画開始ね」

 そう呟いたのは中級地区に入り、作戦をたてた3日後のこと。

「頂き!」

 彼女はスリを繰り返していた。

「これで10件達成! そろそろだとおもうけど」

 何時もならその他大勢の人に紛れるよう意識して行動するものだが、

 今回は見つかるのが目的だ。

 10人から容姿を説明されれば、地区の要人に話が行くはず。


「きみ。ちょっといいかね」

 カナは誰にも悟られぬよう嗤った。


「名前を聞くのが慣例だから教えなさい」

「カナ・マリアン・フィート」

 そういえば要人は血相を変えた。

 片手を上げると部下か10人ほど現れた。

 通行人のふりをしていたようだ。

「とらえよ」

 カナは腕を抑えつけられながら内心でほっとしていた。


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