19.再びの会合

 ✝ ✝ ✝


 背筋が凍るほど厳かな雰囲気の中、カナの凛とした声が反響する。

「これだけ人を騙すことが出来れば、幹部も務まるだろうと判断いたしました。長老には許可を戴きたい」


 長老と呼ばれた白髪の老人は皺を寄せて言う。


「スリの実力は認めよう。だが反対じゃ。幹部は殺しの案件だって回ってくる。闇を知らぬ小娘が汚濁にまみれた地区代表になれるわけがなかろう」


 難色を示したがカナは譲歩の道を示した。


「せめてノルマを設定して代表の資格があるのか見極めていただきたいものです」

 沈黙が流れるもそれは長くはなかった。

「解った。丁度、貴族派の関係者を暗殺をしようと計画しておったのじゃ。それをこなして来るがよかろう」


 レオナは無表情になり細かいことを聞いていく。

「何時までに、始末すれば宜しいのでしょうか?」

「1か月以内に12名じゃ。この世から消し去れば方法は問わん。じゃが、いずれも警備は堅いぞ。それでよいな」

 カナは満足そうに頷き、レオナは緊張した面持ちで返事をした。


 ✝ ✝ ✝


 さて、1日目。

 レオナは中級地区の中でも治安のいい地域に足を踏み入れようとしていた。

「ここからだね。贅沢そうな外見ね。何とか入りこまないといけないわ」

「私はここまでしか来れないけれど頑張れよ」


 カナは組織との約束で標的のいる地域には入れない。

 何度も練習し、何度も立ち振る舞いを見直そうともいざ本番となれば緊張するものだ。

 そしてずっと側に居て、方法を教えてくれたカナはついてくることはない。


 不安を感じているレオナの気持ちを感じ取ったのだろう。カナは安心させるようにレオナの頭をなでてやった。

 それだけで彼女の雰囲気が一変する。不安に陥っていた非力な少女から誰をも説得できる凄腕の商人の顔になっていた。


「よし。それなら大丈夫だ。これ、ささやかなプレゼント」


 カナが懐から取り出したのは、これから向かうところで武器になる道具だった。


「取扱いには十分に注意して。間違って死なれたら今までの私の苦労が水の泡なんだから」

 レオナにそんなことをぼやいたカナは「自分も仕事があるから」と颯爽と踵を返したのだった。


 手段には迷いがあったのだが、

 カナが差し出した手の平ほどの瓶を見た時に心が決まった。


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