16.居場所と訓練

 今回はきちんと家と呼べる造りをしていた。


「ここはかつて私の師匠が住んでいたものだ。ここならいたるところに専門の設備が整っている。使えるかどうかわからない」


 中に入るとかび臭い香りが充満していた。カナはここに十年住んでいたことがあるようで、迷うことなく家の中を進んでいく。


 一面赤い絨毯が惹かれている部屋にたどり着いた。彼女は入り口ドアのすぐしたの部分を引き剥がした。


 べりっとはがれる音の後、木目が現れ、さらにはがしていくと、取っ手らしいくぼみが現れた。


 地下への階段を下っていく。螺旋階段になっていて、

 三周位の長いものであるらしい。カナの周りにはこのような仕掛けが多いことを理解したレオナはこの程度では驚かなくなっていた。


「ここがジョンが訓練した部屋だ」


 壁には武器が所狭しと並んでいる。

 実用的に管理しているというよりは、コレクションしてあるようだ。しかし一辺だけ何も壁に飾られていない。

 そこには杭が打ってある。その杭から鎖がのびて、手枷、足かせにつながっている。


「部屋があるのはいいが、さびが酷いな。ちょっと待ってろ」


 カナが取り出したのは工具一式だった。ちなみにその中には鎖や杭も入っている。レオナにお茶を用意してと指示を出した。そして彼女がもどってっ来るころには新しい金具が取り付けられていた。


 これからレオナの訓練が始まる。


 ✝ ✝ ✝


 カナは苦悩していた。レオナの経過を記録していこうと決めたのだ。

 どこかの変人科学者がその毒に対して致死量をしらべた記録をもとに、各人の体重によってかわるかという研究をした。

 そのデータをカナがレオナに当てはめた。


 毎日、体重を測定することや、食事の管理はカナが行う。

 レオナの要望は短期での習得だ。

 本来ならば微量でしかできないものだが、データを元にすれば、早く身につけることも可能だ。

 もっとも精神力が必要とされるが。

 レオナは精神力に優れている。

 効果が持続しているときは、冷静な思考能力は残されない。

 のた打ち回って、爪で自らを傷つけてしまうこともある。効果が切れてしまったら、いつもの彼女に戻る。

 協力してくれるカナに感謝し、もっとがんばるからと口にする。カナがもっとも衝撃を受けたのは眠っているときだ。


「ごめんね。錯乱したときのためだ。この鎖は防御にもなる」

 カナは傷だらけで眠る彼女の様子を見に行く。


 彼女は薬の影響が出ているのか寝言をよく言うようになった。それは大半がレオに関する夢だった。助けてくれたこと、怒鳴ってまで守ってくれたこと。彼女は夢の中でたくさんの感謝を告げた。きっと彼女も忘れている記憶もあることだろう。


「そうだ。うまくいったとき、レオナにあげるものを作ろう」


 カナが見た中でレオの活躍。印象に残っているものだけでページが埋まった。

 もっと詳しく書いてみようと大切にしまったのだった。


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