8.年長者たちの相談
「随分前から考えていたんだが、レオナにちゃんとした盗み方を特訓してやってほしい。人相手にできるようになればどこでも生活出来るだろ」
いまのレオナは貴族の着物を切って、落としていくのを拾っているだけなのだ。
「確かに。アレでは渡っていけないな。
かといって騙すにしても優しすぎる気性だから顔にでる可能性があるし」
しばらく唸って迷っていたがカナは意を決したように口を開いた。
「私の組織だが、末端も末端の仕事なら用意できる。
初歩的なことばかりで危険ではない。だが金にはならないし、
レオナが耐えられるか分からない」
彼は右手を顎に持っていき、数秒動かなかったが諦めたように口を開いた。
「金も稼いでほしかったが仕方ない。早速で済まないがレオナに紹介出来るか?」
カナがとっさに答えず、視線をそらした先には――
「レオ兄? さっきからなんの話をしての?」
不思議そうに話している二人を見つめるレオナの姿があった。
「なんでもないぞ」
あくまでも隠そうとするレオに呆れと軽蔑の混じった視線を投げたカナは、
あっさりとしゃべった。
「レオからしっかりした盗みの技術を教えてほしいって言われてたんだ。
やる気はあるか?」
「上達しなくても平気だと思うんだけどな」
カナは苦笑しつつ、答えてくれた。
「確かに。この地域だけならいまのレベルで問題ないんだ。
ここは相当に治安が悪いから自分の管理が悪いと言ってしまえばそれまでなんだ。
でも盗める額はそう高くないだろ?」
この問いかけに天使は頷いた。
レオはカナの言葉を補足するように力強く言う。
「それでは駄目なんだ。この地区だけで見ていたら未来はない。
何時までも親がくるまでは待てないだろ。レオナには自立してもらしたいんだ」
レオナは助けを求めるように姐貴分に視線を投げたが、
彼女は正論だと肯定してしまう。
「そうだね。親も事情があっての決断だったのだとしても、
もう違う生活をしているさ」
いまでも帰りを待っているレオナにとっては残酷だとしても
この環境を変えたいのが周りの本音だろう。
「……わかったよ。頑張ってみる」
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