7.猫と美少女
✝ ✝ ✝
よく晴れた昼間、兄妹は野原に出ていた。
そこは家からも近く、この地域で唯一といって良いほど綺麗な場所だ。
レオは踏み固められただけの地面に、
小さな食器を置いた。拾った猫がそれを食べている。
丸々と太っている猫は動きが鈍い。
「それで足りる? ミルクとか無くて平気なのかな~?」
心配そうに覗き込んでいるレオナに、レオは平然と答えた。
「この猫は食べすぎだからな。少しくらい抜いたほうが健康のためだろ」
「そっか。名前は何がいいかな?」
「ジョンっていうのはどうだ?」
彼が提案すれば幼さの残る少女は、満足そうにうなずいた。
レオは前々から妹が言っていた約束時間を知らせてやった。
「そろそろ時間だろう。カナに見せに行くんじゃないのか?」
「あ、そうだった。行ってくるね!」
カナとは同じ村の住人で、彼女もスリを主な仕事にしている。
兄妹と異なる点と言えば、カナは副業として暗殺屋もこなしていることだろう。
的確に仕事をこなすものだから、それなりに繁盛している。
レオと同い年で気安く付き合っている。
レオの服装センスをぼろくそに批判するなど思ったことはすぐに言ってしまう。
そんなはっきりした部分もあって、兄妹にとっては姉のような存在だ。
「カナに聞いてみるとするか。随分毛並みが綺麗な猫だし。誰かが探しているかもしれない」
レオが腰を上げた時、レオナが走ってきた。全力で走ってきたらしく息が乱れている。
「レオ兄! カナ姐がね。話があるって」
レオナと対照的に、ゆっくり歩いてきたのはカナだ。
身長は女性の標準だが、スタイルは抜群の美人。小さい顔にキリッとした一重、薄い唇がそろえば人を寄せ付けない雰囲気を纏った彼女の完成だ。
近寄りがたい美人は険しい顔をして尋ねた。
「レオ! まさかと思うけど飼おうとしているのは貴族の猫じゃないだろうね?
人によったら殺されるよ」
「分かってるさ。だけどお前に頼めば何とかごまかせるだろ?」
清廉な微笑みとも腹黒い笑みとも判別出来ない笑みを浮かべる。
レオにカナは折れた。
「この私に、問題にならないよう協力しろとは。レオって度胸あるんだか、馬鹿なんだか」
「無理なのか?」
「できるさ。というかレオナのためならどんなことでも協力する」
話を心配そうに聞いていたレオナは、カナの返事を聞くなり彼女に抱きついた。
「やっぱカナ姐は頼りになる。ありがと」
「そろそろ猫のジョンの世話をしてやれよ」
レオナが視線を下げれば、猫のジョンがこちらを向いてチョコンと座っていた。
「ごめんね。あそぼ!」
さらに嬉しそうにしてカナの傍から離れて、楽しそうにじゃれ合いはじめた。レオナになついているらしく、足にすり寄ってきた。レオナが座ると膝の上にのってきて
丸くなっている。
和やかな光景をみてレオは自分の頭をワシャワシャと搔いた。
「どうした?」
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