34.姐さんは良い人
カナの苛立ちしか感じられない文句を聞いてレオナは「いけない」といった表情をした。
「忘れてた……」
「相変わらず都合の悪い事は忘れるのとくよネ。とにかく逃げるよ」
「カナ姐。組織の依頼で首を取りに来たんじゃないの?」
カナはぎょっと目を見開いた。
「あんた、私をどこまで鬼畜扱いすれば気が済むの? 一緒に逃避行してあげるわよ」
「どうも。カナって実はいい奴だったんだな」
「ジョンのためでは全くないから安心してね。レオに任させちゃったし、レオナって抜けてるとこあるからほっとけないのよ」
三人はとにかく組織の包囲網をかいくぐるべく疾走し始めたのだった。
✝ ✝ ✝
暗殺して来いとレオナに命じてから四日経った。もう待てないと痺れをきらせたリマの幹部たちは講堂に集まっていた。正確には貴族たちも集まっている。
小綺麗な正装をして会いに行くと言い頭を下げて懇願し、やっと会って貰える事になったのだ。
「公爵夫人が亡くなったのはこの兄弟のせいなのですね」
涙ぐむ高貴な女性の確認に白髪の長老はうなずいた。
「ええ。カナの推薦だからといって受け入れたのが間違いでございました」
「カナ? それはカナ・マリアン・フィートのことですの?」
「ええ。そうです。何か?」
「最安全地区は総知事を毒殺した犯人と思い、探しておりましたの。
どこにいるのです? 重要参考人として身柄の引き渡しを求めます」
毅然とした態度にリマ地区の代表は返答に詰まった。
「それが、彼女はレオナの姉貴分として同行しているはずです。
しかし失礼ながらその件は四年も前のこと。今になっての要請とは」
「私の夫を殺した容疑の掛かっているのですもの。その様な者を放ってはおけませんわ。リマ地区だけでなく全地区に緊急要請を。彼ら三人を野放しにしておくのはあまりに危険です」
✝ ✝ ✝
翌日、全地域に犯罪者の情報が流された。
「号外~号外だよ! リマ地区幹部が最高治安地区ラマと手を組んだよ! 指名手配はカナ・マリアン、他2人。それ以外にも調べでリマの半数が捕まったぞ。調べが進めば地下で運営していた犯罪組織を解体し始めると約束したらしい」
バタバタと五月蠅い街道を見つめるは何かと話題上る三人組だった。
「まずいな。暗殺の件で私も指名手配に入ったかも知れないな」
「確実なの?」
カナがうなずくのを見てジョンは笑った。
「ラマのお偉いさんを暗殺した犯人だもんな」
「この件ばかりは毒殺した後にお悔やみを申し上げに言ったのがまずかったわ。
顔見られて、似顔絵描かれるわで大変だったんだ」
いい加減ほとぼり冷めてもいいと思うと不謹慎な発言をするカナである。
「お前馬鹿か! どんな名目で行ったって怪しいに決まってんだろ。殺しは周囲を巻き込めば何とかなるが、それ以外は記憶に残るだけだ」
「若かったんだからそれくらいの失敗は許してよ」
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