28.兄の考え
✝ ✝ ✝
「それにしてもレオは何を考えていたのかしら? 妹に悲しい思いをさせてまで」
「レオ兄は私のことを考えてくれたんだよ。わけのわからない奴のところよりはカナ姐のが安心できたんだよ」
「レオナは優しいのを一番知っているのはレオだからな」
「ぁぁあ、あそこに猫がいる」
ミャォ~
猫はこちらにおいでとばかりに走ったり止まったりを繰り返している。
「独りなのかな。触ったら駄目だよね?」
「駄目よ。また触った者は死刑とかふっかけられそうだわ。触らずに様子を見ましょう」
カナの言い分に仕方なくレオナは草陰に隠れた。
猫はそのうちに道端で寝転がってしまうが、その時にそれを𠮟るジョンが現れた。
「ほぅら。やっぱりね。猫のいる場所にジョンありってね」
流石にカナのざわめきを聞きとるけはいはなく、ただ話しかけている。
「ほら。餌だ。お前だけがみていたんだな。俺がじつの弟を殺したことを」
「は?」
二人で声をそろえてしまったが、そんなに大声ではなかったらしい。
ジョンは気付かずに話し続ける。
「その場に妹だっていたんだ。俺は憎まれてるよ。レオだって俺が兄だってこと分かってたはずなんだ。自分の命を投げ出してまで俺を拒絶することないよな」
そこまで聞いたカナは我慢の限界だった。影から出て、ジョンの背後に出た。
「ジョン! どういうことなの説明しなさい!」
分かっていたように振り返り、彼は笑った。
「カナか。ってことはレオナも一緒なんだろ?」
「悪かったわね。一人で行動していなくて。一緒にいて悪いことでもあるの?」
レオナはカナの後ろに隠れるように立っていた。
「今の聞いていたのか?」
「ええ。ばっちりとね。レオが実の弟……ならあなたがレオナの兄ってことなの?」
「ああ。そうだ。俺の本当の名はライレオ・リファード・ジョーン。だれ呼んだ奴なんていない。今の俺はジョンでしかない」
「私たちと同じファミリーネーム……それにジョンって」
「そう俺達は血が繋がっているんだ。家で会うことが出来なくで残念だな」
言葉もなく額然としているレオナに変わり、カナが質問をぶつける。
「兄弟ならなんで、あんなことしたの? レオは知っていたってどういうこと?」
「昔から面識はあったからな。生活に困っていたレオに声をかけて、この闇世界に誘ったのは俺だから。レオナが生まれる前にゴタゴタがあって家を出た。妹の存在は噂でしか聞いたことはなかったんぜ」
「どうしてよ? こんな世界に」
「金がないって。正当な方法なんかじゃ食っていけないって懇願されたからさ。俺も同じ理由でこんなことしてたから」
何の罪悪感もなくあっさりといってしまうジョンにレオナはくってかかる。
「兄さんは何もしてないじゃない!」
「アンタがいたからさ。あんたには、俺の組織の中で標的になっていたんだ」
「何時から?」
「去年にスッただろ。お偉いさんの財布。黒と白のシマ模様で、貴重なものらしいぜ。優秀な革細工師に作ってもらって、世界に一つだけしか無いとかいってた」
レオナは記憶を掘り起こしていく。昔のレオナが稼ぐのは少額で、半月も暮らしていけない金額が多かった。
「あ、あの時の」
去年の春までさかのぼる。たしかに白黒で縞模様の財布を手にいれた。見た目は奇抜だと思ったが、中身をみて驚いたものだ。
「半年以上裕福に暮らせた時があった」
いつも必要以上にお金をかけないようにと気を使っていた。その年は気にせずに生活できた。
「その財布はどうなったと思う?」
「レオ兄が『これは俺が持っとくからな』って言ってたから、どこかにあるはず」
レオナの言葉に彼は頷いて、話を進める。
「それを盗んでから、あんたには殺し屋が行ってたはずだぜ。おおかたカナ辺りが必死に防いでいたんだろ」
カナの方を向くと彼女らしくなく、うつむいて表情は髪で隠してレオナに分からないようにしていた。
「ほんとなの?」
「きっかけがレオナだったとしても、どうして殺す必要があったの?」
ジョンは語り始めた。
「この世界に引きずり込んだことを許していなくてね。だからつっけんどんな態度しか取ってくれなかった。俺に協力的だったら殺さなくてもすんだんだ。貴族達は俺の組織にレオナを殺すように依頼したんだ」
ジョンが懇願したものの、「レオの首を取ってくるか妹の首を取ってくるか」の二択を提示された。お前にそれが出来ないのならば別の人間に二人とも殺させるといわれた。だからジョンは行動した。
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