27.期限内の任務遂行

 ✝ ✝ ✝


 残りの件をサクッとこなして、期限内には暗殺することができた。

 レオナとカナは組織のたまり場に呼び出された。やはり床に座って会議の開始を待っていた。前回よりも部外者を拒否するような視線が少なくなっている。

 長老が、杖をついて入ってきた。座ることすら難儀そうだ。

 杖を使って弱者を演出する者は多々いる。しかしほとんどの人が杖を持っているだけで、歩き方は自然な場合が多い。長老の場合は、杖をつく時でも右足を庇うように歩いている。これが嘘だというならば、賞賛に値するだろう。人間の体について相当勉強し、演技も練習したことだろうとカナは観察する。

 少しガラガラ声だったが、開始を宣言した。さっそくその場にいた幹部からレオナの件を促された。

 その言葉に頷いたあと老人は追求してきた。

「レオナよ。お前はノルマを完璧にクリアしていると思っているな。誰かにばれるようでは完全なる成功とは言えん」

 長老は淡々と話して行く。

「待って下さい。アイツは何もしなかった。この件は成功といっても過言では」

「黙れ! そんな事を言っているのではない。見つかったこと自体が失敗なのじゃ」

 なるべく冷静な声でレオナは問う。

「解りました。では結論はどうなるのでしょうか?」

「見られたとはいえ世間の波風を立てずに処理したことは評価できる。したがって当初の位より一つ下に据える」

「ホントですか? 感謝いたします」

 老人は険しい顔のままだ。

「だが、カナの采配があっての成功ということは否めんだろう。したがって、カナは本来レオナがつくべき位につき、上司として指導することが条件だ」

「そ、そんな」

 レオナは絶望的な視線をカナに向けた。カナは責任があることを何より嫌う。実力はあるのに一介の殺し屋として居るのはそのせいだ。

「分かりました。やらせて戴きましょう」

「カナ姐?」

 恐る恐る顔を覗き込めば、闘志をたぎらせることが分かる。

「やってやろうじゃない。ジョンにまでコケにされて黙っていられるカナ様じゃないんだよ」

「決まりじゃな。そのジョンとか言う男にはこちらも注意を払っておこう。せっかく決まった役職が穴になっては困るしのぅ」

 長老の発言を嬉しいと取るか信用されていないと取るかは人それぞれであった。

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