5.美少女に迫る影

 レオが傍にいるからまだ少ないものの、

 楽に金を手にしようと突っかかってくる輩は何人もいる。


 この老婆が薄汚れた格好をしているからといって、金がないと結論つけるのは甘い。


 万が一、貴族が通りかかった時、

 同情してくれるように計算しているに過ぎない。


 レオナにはまだ見抜く力が足りないようで、下卑た勧誘にも恐怖を覚える。


「レ、レオ兄どうしよう」


 助けを求めるか細い声を聞いた瞬間、彼の残酷さが顔を出す。


 揉め事があった時は、穏便に対処すれば騒ぎは大きくならない。


 だからレオは何事も激昂しないように心掛けている。

 しかしレオナに危害が加わりそうな場面ではカッとなってしまう。

 それが彼の悪い癖だ。


 今回も例外ではないようだ。レオは誰もが怯む声を出す。


「誰が腐った要求呑むか! ざけるんじゃねぇ!」


 怒りの言葉を浴びた老婆は、慣れているのか顔色一つ変えない。


「あんたみたいな品のない口のきくと必ず後悔することになるんだ。不幸がくるよ」


 などと喚くだけ喚いて去って行った。

 ちなみに帰る時には杖を使っていなければ、腰も曲がっていなかった。

 シャンと背を伸ばしている様子から四十代に見える。


 どうやら演技だったようだ。


 老女を見送った俺は小さく舌打ちをした。


「全く何なんだよ」


 こういう誘いを受け過ぎたせいか、

 レオナは以上に人に対して距離を置くようになった。


 全身を強張らせているレオナに俺は笑いかけた。


「大丈夫だ。守るから安心しろよ!」

「うん」

 レオナはほっとしたのか、猫を抱きしめて深い眠りに落ちて行った。


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