9月2日 ままとまいばすに行く
時刻は午前零時を目前にして、私は母とまいばすけっとに駆け込んだ。
店内はもう既に閉店の掃除を進めていた頃だった。客は私達しかいない。
「いらっしゃいませ」
若い女性が少し不満気に迎え入れてくれた。いや、大分嫌だったと思う。
僕は母に買い物を早めにに終わらせて退店しようと促した。しかし母は私の言葉になんて耳も傾けずに楽し気な顔で私にかごを渡してきた。
「ここは私に任せて。あなたは買い物をしてきて頂戴。時間は私が稼ぐから」
母はそう言うと近くにあった生卵を手に取りプラスチックパックを開けると卵を一つずつ、まるで散餅銭の儀の如くそれを床に放り投げて行った。あまりにも怪奇的な行動に青ざめた顔をした店員が傍に駆け寄ってきた。
店員などお構いなしに母は次々と卵を投げていく。四つほど投げ終えた頃にぷるぷると唇を震わせて謝罪の言葉をつらつらと店員に述べた。しかし目は私に向けていた。
「どうだ。母は凄いだろう」
と言わんばかりのウィンクに背中を押され私は買いたいものを吟味して見定めていく。
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