32、太陽
喉笛にかみつき、骨を砕き、息の根を止める。
肉を食らい、血をすする。
四日ぶりの、獲物。
すべてを、食らいつくすことはしない。
本能が、そうさせる。
動けなくなるまで、食べることはない。
音。
顔を、上げる。
視界にあるのは、ひび割れた大地。
枯葉が風に舞う、音。
そいつには知る由もないが、そこはかつて川だった。
今はもう、魚どころか虫もいない。
知覚できる範囲に、生き物はいない。
すでに乾ききった鼻は、その働きをやめている。
一歩。
そいつはゆっくりと、歩き出す。
一歩。
開いた口から、よだれを垂らしながら。
さっき食べた獲物の、血。
一歩。
空気が、揺れている。
一歩。
地面からの熱で、体が燃えるようだ。
一歩。
いっそのこと地面に横たわり、燃えてしまおうか。
そいつは、立ち止まる。
見上げる、空を。
そこにあるものを見て、そいつは。
笑ったように、見えた。
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