4、冬

 ぎしり。

 忘れていた。

 板張りの廊下の冷たさを。

 吐く息が白い。

 家の中なのに。

 そうだった。

 ここはそういう場所だった。

 障子の向こうはどの部屋も明るい。

 静かだ。

 ぎしり。 

 今夜。

 消えていく命。

 ろうそくの火が消えてしまうように。

 ふっと。

 ぎしり。

 ゆっくりと廊下を歩く。

 暗い川を行く船。

 ゆっくりと。

 なるべく火を消さないように。

 手でかこって。

 ぎしり。

 今夜。

 消えていく命。

 でも。

 この空の下、どこかで。

 今夜。

 たぶん。

 生まれてくる命もある。

 

 

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る