怪鳥サダミンゴ

「サーダミンゴ、サダミンゴー!」

「サーダミンゴ、サダミンゴー!」


かの怪鳥、サダミンゴの歌である。 中学二年のとき、ふとしたことから、友達数人で、鳥の名前を順番に言っていこうということになった。思いつかなくなったら負け。 しかし、中学生にもなって、賢くなった我々は、あらかじめ、ルールを作った。理科で習った鳥類で、「ツル」が出たら、それより細かい「タンチョウヅル」はもうダメ。「カモ」が出たら「カルガモ」はダメ。ルールもはっきりしている。さあ、開始だ。


「カラス!」「ハト!」「ガチョウ!」「ダチョウ!」・・・・・・ だいぶ中学生が知っているレベルの鳥は出尽くしてきた。そろそろ思いつくのに一人ひとり、時間がかかるようになってきた。


そして自分の番。なんかないかな。思い出すんだ。思い出すんだ・・・・。 ん?なんか自分の頭の中で絵が浮かんだ。


さだまさし!


さだまさしが鳥の歌を唄っていた。昨日の、「ザ・ベストテン」だったかな。十位までに入ってたわけではなく、ゲストとして出ていた。曲目はアフリカを題材にした歌、「風に立つライオン」だった。えっと、その中で、確か、


「・・百万羽のフラミンゴが一斉に飛び立つ時・・・」


だった。

そのとき映像で、鮮やかなフラミンゴが映っていた。 そうだ!フラミンゴだ!


「さだまさし」の「風に立つライオン」の「フラミンゴ」!


さだまさしの風に立つライオンのフラミンゴ!


さだまさしのフラミンゴ!


フラミンゴ!  


よし、言うぞ!僕の記憶を辿る能力の勝利だ!危機を乗り越えた!


しかし口を突いて出た言葉は、


「サダミンゴ!」


え?今、僕、なんて言った?サダミンゴ?「さだ」と「フラミンゴ」が慌てて混ざってサダミンゴ。王貞治がフラミンゴ打法を使っていたということも、言い間違いを後押ししたかもしれない。サダミンゴ。とにかく、これ、すごい恥ずかしい。先生のことを間違って「お母さん」と呼んでしまったときと同じくらい恥ずかしい。


あ、いや、まだ大丈夫だ。こんな鳥がいると強弁してしまえばいいや。こんな鳥の名前を言う遊び、この場さえ乗り切れば皆忘れてうやむやになるさ。よし!


「え?サダミンゴ?」

「うん、サダミンゴ。そんな鳥を、図鑑で見たことあるよ。」


僕はそしらぬ顔で、サダミンゴは当然存在するという振りをした。

「へえ、そうなのか。」

友達の大半が納得しかけたそのとき、ひとりの友達が、


「いや、僕知ってるよ。昨日、さだまさしがフラミンゴの歌唄ってたの。サダミンゴって、さだまさしとフラミンゴが混じっちゃったんだよ。」


なんてことを言うんだ!せっかく、サダミンゴは存在するということで押し切りかけてたのに!しかも、もう引けない。まわりの友達も、一転して、説得力抜群で、事実である指摘した友達の説を信じてしまった。そして、中学二年生の勢いある少年たちは、こんな面白いネタ、逃さない。


「うえ~、恥ずかし!」


必死に僕は食い下がった。もうあとには引けない。


「いや、ホントにいるんだって、サダミンゴ。」

「いやいや、絶対おらん。」

「サーダミンゴ、サダミンゴー!」

「サーダミンゴ、サダミンゴー!」


みんなが合唱する。しばらく僕のあだ名はサダミンゴになった。サダミンゴと呼ばれるたびに、言い間違いの恥ずかしさと、それを実在するということで押し切ろうとしたがバレた恥ずかしさがあり、とんでもなく恥ずかしい。胸が張り裂けそうだ。早く皆忘れてくれ!あーっ!うーっ!

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