『紅だ!』 桜庭一樹

『紅だ!』 桜庭一樹


 新大久保のコリアンタウンに事務所を構える道明寺探偵屋には、現在活動している探偵が二人いる。うち一人、真田紅が事務所の扉を開けた先にはオルチャンメイクを施した少女が立っていた。ハイタカと名乗った少女はダークウェブ上で懸賞金をかけられ、殺し屋などに追われているらしい。紅はハイタカに雇われる形で彼女の身辺を警護することになる。

 そのころ道明寺探偵屋のもう一人の探偵、黒川橡はかつての職場の先輩から事件の相談を受けていた。全国各地のATMから偽札が発見されているというその事件の重要参考人として捜査線上に上がったのは、かつての相棒、紅と一緒にいた少女ハイタカだった。

 ハイタカは何故追われているのか、偽札事件とハイタカとをつなげるものは何か。わだかまりを抱えコンビを解消していた紅と橡は、一年ぶりに共闘する。



 男女バディの探偵が謎の少女に纏わる入り組んだ複数の事件を解決に導く、アクションエンターテイメント小説。

 娯楽度は高いけれど、私小説『少女を埋める』で書かれていた怒涛の日々に執筆されていたらしく、両者の内容も呼応しているところがある。

 探偵の二人をはじめ大量の大人たちを翻弄するハイタカは、知略を尽くして共同体に埋められることを忌避した「少女」だし、彼女に懸賞金をかけたものの正体は大変ドメスティックである。『少女を埋める』と本作はジャンルの異なる小説ながら、双子のような関係になっている。両者合わせて読むと得るものが大きい。


 大嵐の到来を予測して物語は閉じられ、続編も書けそうな終わり方になっているけれど、ここで終わった方が鮮烈でいいと思う。

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