『フランキスシュタイン』  ジャネット・ウィンターソン

『フランキスシュタイン』

 ジャネット・ウィンターソン  木原善彦


 一八一六年、レマン湖のほとりで五人の男女がそれぞれ怪奇譚を執筆することになった。詩人シェリーの妻メアリー・シェリーがその時生み出したのが、死体をつなぎ合わせて怪物を生み出した医者の物語『フランケンシュタイン』だった。

 現代のイギリスでは、トランス男性の医者ライ・シェリーが怪しい研究を行っている人工知能研究者のヴィクター・スタインと関係を持つ。

 メアリー・シェリーのパートとライ・シェリーのパート、そして『フランケンシュタイン』の物語が交互に語られながら、物語は収束する。


 メアリー・シェリーは物語を通し、怪物を生み出してしまったヴィクター・フランケンシュタインという人物を誕生させる。現代ではライ・シェリーが秘密裏に何かを行おうとしている人工知能研究者のヴィクター・スタインに出会って恋に落ちる。

 メアリーとライ、フランケンシュタインとスタイン等、各パートにそれぞれ呼応する人物を配置して、男と女や人間やロボットに関する議論が交わされる(その様子がイチイチ笑える)。

 そして二つの世界と小説の世界が融けあって、別の世界が生み出されたような結末が幻想的で面白かったんだけど、ただ語られるビジョンに魅せられただけなので、どの辺がどう面白いかを伝えるのが難しい。SF、難しいよSF……。SFを名乗ってる小説なのかどうかはわからないけど。とにかく読んでいて楽しい小説であることしか私にはわからない。


「この物語は現実という創作物に埋め込まれた創作」という、作者の言葉が素敵だった。

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