『向日性植物』 李屏瑤
『向日性植物』 李屏瑤 李琴峰 訳
「私」と彼女の先輩にあたる小游、小游のもと恋人の小莫、この三人の女子を中心とした人間関係の移り変わりを、女子校時代、大学時代、社会人時代と追いながら語った、青春恋愛小説。
先に読んだ『蝶のしるし』が大変よかったので、流れに沿うようにして読んだ台湾のレズビアニズム小説。もともとはwebの掲示板で連載されていた小説だったとのこと。
訳者あとがきによれば、作者は「私はレズビアンが自殺しない物語を書きたかった」と語ったことがあるとのこと。その意志がタイトルにもよく表れている。作中では同性同士がパートナーシップを結んでいた場合に被る困難(パートナーが重体なのに病室の見舞いすらできない、等)や社会の壁が書かれているが、それらに屈することなく、明るく希望を感じるラストに着地するので読み心地が良い。
全体を通して印象的だったのは、語られる世界への誠実さだった。女性同士の恋愛を語るということは、社会的にどういう役割を持つのか、もしくは期待されているのか。その問いに対して自覚的であったと言うべきか(この誠実さは「蝶のしるし」にも感じられた)。2022年現在、東アジアで同性婚が認められているのが台湾だけという現状と比べてつい考えてしまうものがある。
小説の端々で描かれる、2000年代初期からのカルチャー描写や、皆が通っていた女子校や大学の描写もノスタルジックで楽しいものだった。特にメインの三人と、「私」の親友で一時期交際していたこともある小旻の四人でひなびた遊園地へあそびに行くシーンのきらめきやら、その前後のドラマでのヒリつき具合も合わせて忘れがたい。
メインキャラクターの三人や他の登場人物たちも、それぞれに問題は抱えていても難関大学に進学できる程度の余裕のある家の出身で、社会人になったあとでも各々都会で自立した暮らしを送れているあたりが実にまばゆいのだけど、そういったところも大きな魅力の一つだと思う。映像で見てみたい。
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