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「この近くなので歩きましょうか。空気が美味しいですねぇ」

「なぁ、死神って飯食わないんじゃねーの?魂だけ鎌で狩ってくもんだとばかり思ってたけど」

「そんなことは無いですよ?僕みたいに食事が好きなのもいれば、美容に気を使う者もいる。鉄道好きで、移動は常に鉄道という方もいますし、人に化けてお医者さんや看護士をしてる人もいます。そうすれば魂の回収はスムーズに行きますから」

「回収って?」

「寿命が来たら、然るべき所へお送りするだけです」

 へぇ、と思ったがちょっと待て!

 美容に気を使う死神って、本来死神は骨だろう!?

 骨に美容液塗ってるのか!?

 これは聞いちゃいけないと思っていたら、「僕の顔、骨に見えますー?」と聞かれ、考えてる事は筒抜けか!と文句を言う。

「今度からは読みません。というより、君、読みにくいんですよ。今回のような疑問はダダ漏れに顔みたら分かりますけどねぇ、なんというか、ちょっと僕にも分かりません」

「あ、そ。んで、アギル……って呼んでいいのか?」

「お好きに」

 飄々とした様に、呑気に話すのが何だか気に食わず、「アギルの顔は、普通の二十代後半、真っ黒なワカメ髪。ヨレヨレ黒スーツでネクタイなし。身長は180位だと思うんだけど」と少し皮肉を込めて言う。

「ヨレヨレって酷いですねぇ。これ、一張羅なんすけど……。あと、わかめ頭ってなんすか?毎月、カット1000円の床屋に行ってますよぉー?あ、着きました。見えますか?あの岩肌から出ている水」

 よく見ると水が出ているには出ているが、チョロチョロっと。

 またもや瓶を渡され、汲んでこいと一言。

 満杯にするのにどんだけ時間かかるんだよ!

 水道が欲しい……

 何とか満杯になった瓶を渡すと、手帳を広げ、またグニャリ──


 コケーッコッコッコ

「鶏?」

「ええ、一羽選んでください」

「じゃあ、あのぶっくぶくに太ったやつ」

「分かりました。悠一君はこの裏の畑からじゃがいもと人参、玉ねぎ。あと、ローリエもなっていたと思うので貰ってきてください」

「この家の人知り合い?」

「いいえ? この硬貨を渡したら分けて貰えます」

 硬貨を受け取り、言われた通りに野菜が欲しいことを言うと、すぐに用意してくれたのでお金を払う……が、鶏代はどうなった!


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