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 夢ならできるはず……と、構えをカッコよくとって後悔する。

「無理!無理無理無理無理!」

「えー!僕、戦うのは面倒なんですよねぇ。お腹空いて力が入りません。ふぁいと!」

「ふざけるなー!」

 モオーンから逃げつつ、距離をとって槍を投げる。

 うう、まるで原始人みたいじゃないか。

 当たりもせず、武器だけ無くし逃げわっていると、「戻れって思えば武器は戻ってきますよー」と呑気な掛け声。

「そ、そうだ!俺を勝手にバイトにしたのはあんただよな?ここは手本を見せて教えてくれないと……早く!踏み潰される!」

「仕方ないですねぇ」

 そう言って手元が光ったと思ったら、真っ黒な鎌。

 死神の持つ……鎌……

「僕の」と、大きく上に飛躍し、「名前は……」と鎌を振り構え、「アギル……です! っと。はい、終わりましたよ」

 名前を言い終わると同時に、巨大なモオーンの首は落とされ、小さく縮めた鎌で太ももの肉を器用に切り、肉の塊にしている。

「じゃあ、帰りましょうかぁ。あ、これ渡しておきますね。危険だと感じたら、この丸薬を一粒飲んでください。元の古本屋の店内に戻れますから」

「先に渡せよな……」

 店に戻り、今度は何をするのかと思ったら、自宅にしているという二階のキッチンで、ウキウキしながら肉を切り、「ステーキにします」と焼き出す。

 しかも鍋にはブロッコリー。

「ポテトもありますから。あ、ソースはどうしますー?新鮮なので、塩で食べるのも良いですし、オニオンソースでもいいですしねぇ。悩みます!」

「その前に本当に食えるのかよその肉……」

 椅子に座って怪しんでいると、鉄板に乗ったモオーンステーキにブロッコリーとポテトが添えられ、パンにします?ご飯にします?と、店内で聞いた気だるそうな声とは違い、今にもぴょんぴょんと飛び跳ねそうだなと言うくらいウキウキしているというより、もう、脳内お花畑だろうと諦めて席に着く。

「召し上がれぇー」

「い、いただきます……」

 ナイフとフォークをもって、そっと切るだけでスゥーっと肉が切れ、少し塩につけて口に入れると、しっかり火が通っているのに、肉汁がすごく、しかも舌でとろける……

「んっふーぅ!で・り・しゃー・す」

 妙なテンションで食べてはいるが、持ってきた肉はステーキ二枚分。

 といっても、かなり分厚いのだが……

「こんなにうまい肉なら、もっと持ってこれば良かったのに」

「ダメです! 確かに食べれる部位は沢山ありましたが、このモオーンの肉は部位が美味しいんです。命を狩り、この贅沢な部分だけと思うかもしれませんが、これが私の流儀……です!」

 どんな流儀だよとその時は思ったが、夕食の魚を捕りに行った時にも二匹。

 しかも、食材のこだわりがかなり強いらしく、食器まで揃えてあり、魚だからと山と畑にも連れていかれ、山菜を採り、芋掘りをさせられ、出てきた夕食は料亭か?と言うくらいの出来栄え。

「今日一日どうでしたか?」

「どうと言われても……。死神が芋堀して、山菜採って料理して。食ったから現実なんだと思うけど……なんで死神がこんなことしてんのかはサッパリわかんねー」

「いずれ、君にもわかる時がきますよ、悠一君」



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